上海であるパーティに参加したら、化粧室で小柄な女性に声をかけられた。

 「あなた、日本人ね、すぐに分かったわ」

 マギーと称する女性はモンゴル出身。今は大連で貿易をしているとかで、上海には出張で訪れたのだと言う。

 「こんなところで日本人と知り合えるなんて!」と妙に喜ばれた。外務省の調査によればモンゴル人の7割が親日感情を抱いているというが、本当にその通りだと思った。

 強い訛りがあるものの、中国語を話せる彼女は「最近は中国がすごいのよ」と切り出してきた。「大きい声じゃ言えないけれど、どんどん資源を持ち去っていくし、国境を乗り越えてどんどん中国人が入ってくる。しかも国境付近では土地まで不法に占拠されているようなの。はっきり言って、いい気分じゃないわ」と眉をひそめた。

鉱物資源を武器に拡大するモンゴル経済

 1990年に社会主義国から脱却、複数政党制を導入して民主化したモンゴルの経済は、2000年代に入ると大幅に拡大した。1人当たりGDPは2004年からの3年間で約2倍に急増した。

 しかし、2008年の金融危機と、それに伴う輸出主要産品である銅の価格暴落のため、モンゴルの2009年の実質成長率は前年比1.3%減まで下落した(2008年は前年比8.9%増だった)。

 マギーは「それでも最近はだいぶ経済も良くなった」と語る。

 その支えとなっているのがモンゴルの鉱物資源である。特に「タバントルゴイ炭田」「オヨートルゴイ鉱区」では、外資の本格的な参入が始まっている。

 良質な石炭鉱区として知られる「タバントルゴイ炭田」は、埋蔵量64億トン(コークス炭は18億トン、外務省調べ)という世界最大の鉱区だ。東西に2分割された西鉱区について、2011年初めに国際入札が実施された。