「文芸春秋SPECIAL」の季刊春号は「結婚という旅」の題で特集を組んでいる。

 田辺聖子、緑魔子、紫門ふみ、小沢昭一、島田雅彦などの多彩な面々が名前を連ねていて、インタビューあり、エッセイあり、アンケートありの盛り沢山の内容で、楽しい一冊になっている。

 中でも「わが家の理不尽」というテーマで書かれたエッセイがいずれも愉快かつ秀逸だったので、勝手に便乗させていただき、私も同じテーマで書いてみようと思う。

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 私は大学を卒業するのと同時に結婚した。今からちょうど21年前、1989年3月末のことである。

 現役で北海道大学に進学し、留年と休学を1年ずつしたが、2月生まれの私は24歳になったばかりだった。つまり私には独身時代がただの1日もなかったわけで、こればかりはちょっともったいなかったような気がしている。

 妻の方が3歳上で、彼女はそのとき27歳。晩婚化が進んだ昨今では、27歳というのは若い部類に入るだろうが、21年前は女性が結婚する年齢としてはけっこうぎりぎりだったように思う。妻は10月生まれなので、われわれ夫婦の年齢差は4つに開いて3つに縮まり、また4つに開くを未来永劫繰り返す。

 妻は埼玉大学に在学中から某テント劇団の女優をしていて、2年後に行われる予定の全国縦断公演の準備のために仲間の劇団員5~6名と共に札幌にやって来た。以前から北大演劇研究会と交流があり、演研のツテで、恵迪寮に宿泊させてもらえないかといって現れたのが私と妻の出会いだった。

 88年4月末のことで、私は1年間の中南米滞在から戻ったばかりだった。

 その後の経過については割愛させていただくが、11月半ばに、私は東京の御茶ノ水にある小出版社への就職が決まり、それなら春から一緒に暮らそうということになった。