「売れる商品は作るな」を創業以来のモットーにしている変わった会社がある。浜松の大学産業だ。
創業は曽布川尚民(そぶかわたかひと)さん。1937年生まれ。丑年天秤座 AB型。へそまがりで、人の真似をするのが大嫌いと言う。だから名前も「大学産業」という変わった名前になった。「大いに学ぼう」「大いなるものを学びとろう」が会社の基本だ。
生まれながらのオルガナイザー
私は曽布川社長と知り合ってからこれで22年ほどになる。変わらぬバイタリティーとあくなき好奇心を持ち、常に集団の世話役として汗を流しておられるのを見てきた。
やや太めの体をゆすりながら、いつもニコニコと話の中心になっておられた。
人には生まれながらに世話役に向いた人というのがきっといるのだろう。年中他人の世話をして走り回っておられるので部外者には大変そうに見えるのだが、本人はそれほど苦にしている風もない。別の会に行ってみると、そこでも幹事を引き受けて、汗をかいておられる。
世話役は大変だが、メンバーの情報中枢となり、アンテナが一気に広がる意味がある。曽布川社長はもともと世話好き、人のためになることが好きな上、気さくな人柄で敵が少なく、自然にリーダーになってしまう。
静岡県の中小企業の大事なオルガナイザーの1人だった。
仕事は楽しみ、相手に喜びを与えるもの
大学産業は、小規模ながら浜松の頭脳集団として全国に知られた総合水処理企業である。
創業は1967年。父親の曽布川芳民さんに懇請され浜松に帰郷した。会社勤めだと転勤があるため、「転勤は子供の教育上好ましくない」という考えもあったという。
故郷の浜松で何をやるかということでいろいろ検討したが、薬剤師の資格も生かせ、未来永劫続けられる仕事ということでいろいろ探して、最終的に「水」「空気」「食料品」が候補に残ったが、結局名前が曽布川であることから何かのご縁と、「水の道」を選んだという。
最初は静岡県下を飛び回り、水の滅菌などをしていたが、塩素消毒をすると、どうしても赤水になることがある。そこで滅菌と同時に除鉄装置を売るというように、営業品目を年に1つづつ増やしていった。