ベンツやBMW、ポルシェ、フェラーリが時速180キロで疾走――。日本の道路では性能をフルに発揮できないトヨタや日産のクルマも、ここでは伸び伸びと走っている。ドイツのアウトバーン(高速道路)は一部区間を除き、乗用車に制限速度がない。筆者が乗ったバスは120キロ前後出しているが、どんどん追い越されていく。しかし高速走行でも3車線それぞれで秩序がきちんと守られ、危険な運転は目にしない。(写真も筆者撮影)

アウトバーンのトイレ、50セント硬貨が必要

 今回のドイツ取材では、化学業界最大手BASFの本社があるルートヴィッヒスハーフェンやフォルクスワーゲン(VW)の本拠地ウォルフスブルクなどを回り、スイスのジュネーブからフランクフルトに戻るまで数千キロをバスで移動した。

 サービスエリアで休憩しながらの長旅で、欠かせないのが50セントのユーロ硬貨。これがないとトイレに入れない。同行のドイツ人が硬貨のパックを用意していたから、事無きを得た。

 家族4人で使うと300円弱の出費になるが、そもそも乗用車は高速料金が無料だし、清潔に保たれているから納得できる。「環境」を守るにはカネが掛かるという哲学が社会の隅々まで浸透しており、コスト負担の曖昧を美徳とする日本とは対照的だ。もっとも機械にコインを投入するとクーポンが出てきて、これを売店に出すと代金から50セント引いてくれるから、利用者には不満もないのだろう。

駅ホームから自転車でスイスイ出勤

 ドイツのアウトバーンは20世紀初めに計画され、第1次大戦後の失業者対策と国威発揚を目的にヒトラー政権が整備を進めた。国土交通白書の2007年のデータによると、ドイツの国土面積は日本を若干下回るが、高速道路の供用延長は日本の1.3倍に当たる1万2531キロを誇る。