トヨタ生産方式の本来の考え方を伝えるべく「本流トヨタ方式」を書き始めて、早くも丸3年が経ちました。

 根底にある哲学だけでここまで来てしまいましたが、次回からは「本流トヨタ方式」の本論に入っていきたいと思います。今回は「現地現物」の最後のまとめの話をします。

「現地現物」で見ると世の中の見え方が変わる

 「本流トヨタ方式」で言う「現地現物」とは、その要点を箇条書きすれば、以下のようになります。

 (1)前評判や学説、上司の意見などの外部からの擾乱をすべて排除して、現地に出向き、現物と対峙して事実を事実として把握し、洞察せよ(モノの情報)。

(写真1) 地上から見た富士山

 (2)現地の置かれている実情を聞き出し、それに対応するために行っている実態を正確に把握せよ(コトの情報)。

 (3)それによって対象を自らの全能力で理解した上で、「あるべき姿」との差異を把握することから問題解決が始まる。

 相手が富士山だとすれば、(1)は右の写真1のように正面からしっかり見よ、ということを意味し、(2)(3)は写真2のように遠方や高高度から富士山を取り囲む環境を鳥瞰せよということを意味しています。

(写真2) 甲府上空から見た富士山

 昨今、新聞等で取り上げている様々な問題点を「現地現物」で見ると、どのような姿に見えるでしょうか。

 いろいろな事実を突き合わせて考えてみると、問題点の捉え方が世間とは違って見えてくるはずです。それを皆さんとともに体験したいと思います。

 まずは、TPP参加の是非を巡る問題を取り上げてみます。

【例題1】日本はTPPに参加すべきか否か

[事実1-1]

 欧州が戦場だった第1次世界大戦中に、中国で利権を拡大した日本は、大戦後に設立された国際連盟の主要国の一員に加わります。その後、軍部が独走し、1932年の満州国建設で対日圧力がピークになり、翌年に日本は国際連盟を脱退してしまいます。