「図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする」(「図書館の自由に関する宣言」の冒頭の言葉)

図書館戦争
有川 浩著、メディアワークス、1680円(税込)

 図書館の壁に、こんな文章が掲げられているのを見た記憶は無いだろうか。終戦後、図書館員たちが、「戦争中のように図書館を思想統制の場にしてはならない」との思いから、図書館の中立性を守るために熱い議論を戦わせ、結実したのが1954年採択の「宣言」だ。(その後、1979年に改訂採択)

 いつも親切に相談にのってくれるレファレンスカウンターの女性や、館内で開催している読み聞かせイベントで笑顔で子供たちを相手にしている若い男性図書館員も、こんな重要な「任務」を負っているのか──。そう思うと、もうちょっと背筋を伸ばして図書館の本を読まなければ──という気持ちになる。

「宣言」は、その任務を果たすために
第一 図書館は資料収集の自由を有する
第二 図書館は資料提供の自由を有する
第三 図書館は利用者の秘密を守る
第四 図書館は全ての検閲に反対することを確認実践する

 図書館の自由が侵される時、われわれは団結してあくまでも自由を守る──と続く。

図書館内乱
有川 浩著、メディアワークス、1680円(税込)
図書館危機
有川 浩著、メディアワークス、1680円(税込)
図書館革命
有川 浩著、メディアワークス、1680円(税込)

 『図書館戦争』は、この自由宣言の趣旨にのっとり、熱い気持ちで、図書館員としての任務に燃える若者たちの物語なのだが・・・冒頭から「いったい、どういう設定なのだろうか」と頭の中を「???」が舞う。

 主人公の笠原郁が母親に宛てた手紙は「念願の図書館に採用され、私は今、毎日、軍事訓練に励んでいます」とある。

 公序良俗維持のために検閲を正当化する「メディア良化法」のもと、「メディア良化委員会」が書店に対する取り締まりを強化、国家にとって好ましからぬ表現を含む書籍を強制没収するなどの実力行使を重ねていた。

 メディア良化法に真っ向から対立するのが、あらゆる検閲に反対する「図書館の自由法」だ。実質的な言論統制機関となった「良化委員会」の実力行使を阻止するため、図書館は図書隊を編成し自動小銃、狙撃銃などで武装。ハリウッド映画顔負けの迫力の戦闘シーンが展開される。

 「基本的人権である知る自由のため」「検閲に反対する」という崇高な理念はともかくとして、「なんで、図書館が武装して銃撃戦までやらなければならないのか?」などという野暮な疑問はこの際捨ててしまおう。

 「中途半端にリアリティがあり、中途半端にウソっぽい小説」には、ツッコミを入れたくなるのが常だが、ここまで徹底して奇想天外で型破りな設定となると、SF小説として楽しむしかない。

 書き手の度外れた妄想力に敬服の念さえ覚える。図書隊については、組織構成、階級、記章まで、軍事オタク的に微に入り、細に入った設定がなされている。

 しかし、この物語が戦闘シーンばかりに終始しているわけではない。

 登場する図書館員たちは、それぞれに個性が強く、魅力的。人間ドラマあり、ほの甘い恋愛話ありの飽きさせないストーリー展開。そして、何よりも、根底には「本が大好き」「好きな本を、好きなだけ読みたい」という本好きの純情な思いが流れている。

 現実ではありえないSF小説として読み終えた後に、なぜか、図書館に行って「図書館の自由宣言」が現実に存在していることを、自分の目で確かめたくなる。