共通通貨ユーロがドイツ、フランスと同じくギリシャにも低金利の恩恵をもたらし、リーマン・ショックまでは好景気を謳歌した。金融危機に際しても、ユーロが防波堤となって、東欧諸国のように債務危機がすぐに顕在化することもなかった。
しかし、それは単なる問題の先送りに過ぎなかった。
低金利で借金をして身の丈以上の消費を行ったツケが回ってきた姿は、サブプライム問題やドバイの債務危機と同じ構図だ。
米国と異なる欧州的アプローチ
この問題に対するEUやユーロ圏の取り組みはいかにも欧州的だ。欧州が抱える構造的問題として、「金融政策」は超国家的に行われる一方で、国家主権とも言える「財政政策」は各国の責任においてなされる。
そのため、景気対策や銀行救済は各国任せとなり域内の最適化には至りにくい。ギリシャのように、ECBの「金融政策」がその国経済にとって緩和的すぎる場合には緊縮財政を取るべきなのに、強制する手段が十分ではない。どこかの国が困難に陥った際に救済するセーフティーネットも不十分。
ギリシャ危機はユーロの弱点を克服するチャンス〔AFPBB News〕
1999年のユーロ発足当初からこの問題は認識されていた。しかし、「話し合い」や「道徳的説得」といった欧州内の協調によって解決できるとの思い込みから、これまでは、誰も、真剣にこの問題に取り組もうとしなかったのだ。
この点は米国とはアプローチの仕方が大きく異なる。米国の場合、明確なルールを決めて、最小限度のセーフティーネットを整え、ルールをはずれた者には罰を与え、失敗した者は脱落させるのが常だ。
むろん「一国」と「複数国家の集合体」という違いはあるが、思想の違いは色々な面に表れている。金融面では、金融機関の再編や不良債権処理のスピードの違いや、今後の金融規制の制度設計において、こうした欧米の考え方の差が反映されている。
実体経済においても、不況に際して、米国企業はすぐに人員削減することでV字型回復を実現しやすいが、欧州企業は時短というワークシェアリングで対応するため、経済へのショックは少ないものの回復にはより時間がかかる。
一方英国は、欧州の中では米国により近い考え方をするため、ユーロ圏とは一線を画した立場を維持している。そうした中で突きつけられたのは、「ユーロ圏そのものがセーフティーネット」という考えは幻想に過ぎなかったという事実である。

