本流トヨタ方式の土台にある哲学」について、「(その1)人間性尊重」「(その2)諸行無常」「(その3)共存共栄」「(その4)現地現物」という4項目に分けて説明しています。
引き続き「(その2)諸行無常」について話を進めます。このコラムでの「諸行無常」とは、実務担当者が直面する「あらゆる事象が時間と共に変化してしまう」ことを言います。ここでは、本流トヨタ方式でこれをどう捉え、どのように取り組んでいるかを説明しています。
これまで諸行無常に関して、「<1>諸行無常と日本人」「<2>自分の城は自分で守れ」「<3>標準作業時間とは何か」「<4>2007年問題は解決したか」「<5>企業は鍛えなければ衰え、変わらなければ滅びる」についてお話ししました。
今回は、「<6>今日は明日のためにある」についてお話しします。
貴重な勤務時間を割いて明日のために備える
読んで字のごとく、本流トヨタ方式では「今日という日の勤務時間は、今日の仕事をこなすためだけに使ってしまうのではなく、明日のことも考えて使え」と説いているのです。
今日のレベルの仕事が明日も間違いなくできるように、貴重な勤務時間の一部を割いて、例えば工具や設備の点検をきちんとやり、必要に応じて修理をしなさいということです。
作業面で言えば、今日の作業に自分として満足できなかったら、工具の置き場、部品の置き方など、やりにくいと思ったところを納得がいくまで調整してから帰りなさいということです。
多技能をこなす腕を持った人でも、しばらくやらずにいると腕が鈍ってきます。それを防ぐには、ある頻度で作業をローテーションすることが必要になります。この活動は、今日のレベルを「明日も維持するための改善活動」とも言うことができます。
先回、「企業は生き物、鍛えなければ衰え、変わらなければ滅びる」と説明しました。まずは、今日の力を維持する仕組みを作り上げた上で、刻一刻と変化していく環境に対応しながら、それ以上の速さで自分の職場を成長させていくことが必要不可欠です。
明日は今日よりも確実にたくましく成長していくため、今までこのコラムで説明してきたように、管理者は現場に対して数%のストレッチ目標を与えたり、優秀な人から異動させるなど、様々な負荷をかけ、成長を促す課題を与え、結果をフォローしていくのです。上司は時には鬼になっても進めなければなりません。これらの活動は、「成長のための改善活動」とも言えます。
市場で他社との競争に勝たねばならないという厳しい状況の中でも、このように勤務時間を割いて改善活動を続け、たくましく生き残っていけという意味で、本流トヨタ方式では「今日は明日のためにある」と言ってきたのです。