中国のサイバー諜報活動に神経を尖らせるオバマ政権
今回のグーグル撤退騒動は、もはや一企業の問題ではない。「人権重視」を掲げるオバマ政権の下、外交問題として位置づけられようとしている。以前から米・中間にはネット上のこうしたスパイ行為をめぐって諍いが絶えなかったが、オバマ政権が誕生して以降、さらに顕著になったようである。
既に2009年4月30日付「サイバー諜報活動を警戒せよ」でも指摘したように、オバマ政権は中国によるネット上のスパイ行為、サイバー諜報に神経を尖らせていた。2009年1月には、米国のコンピューターネットワーク保護に向けた計画を発表しており、そこでは、サイバーインフラを「戦略的資産」と位置付け、サイバーセキュリティーを最優先事項して、サイバースパイやサイバー犯罪と闘うとしている。
2009年11月、初訪中したオバマ大統領は、復旦大学など上海の大学生約500人との対話集会を開いた。その際に、ネット検閲を強める中国政府を暗に批判するかのように「検閲の無い自由なインターネットへのアクセスを強く支持している」と強調した。
今回グーグルが方針の転換を図ったことは、このような現政権の姿勢を反映したものとも考えられる。
世界一洗練されたネット諜報国家
それでは、中国のサイバー諜報を牽制する米国はどうかと言えば・・・。当然のことながら、民主主義国家として、中国のようなあからさまなネット検閲はしていない。しかし、国家として、どの国よりも、緻密で洗練されたネット諜報活動を行っているのだ。
2001年9月11日の米同時多発テロを契機に成立した「米国愛国法」によって警察による盗聴の権限が拡大され、全米のプロバイダーに設置された通信傍受システム「カーニボー」の利用も裁判所の許可なしに行われるようになった。コンピューター、電子メール、インターネット検索、電話等の電子通信に対する当局の調査権限が拡大され、外国人に対する情報収集の制限が緩和された。

