グーグルが2006年1月の市場参入からわずか4年で中国からの撤退の方針を表明した。
発端となったのはグーグルが提供する「Gメール」のサービスで、中国の人権活動家数人のアカウントに何者かがアクセスし、情報収集を目的とする「非常に高度なターゲット型攻撃」を行ったことだ。その手口はセキュリティーを破るといったものではなく、フィッシング詐欺だったという。
グーグルは中国参入に際して、中国政府の方針を受け入れネット検閲も是認して事業を始めた。これに対して米国内から多く批判はあったが、他国で仕事をする際、その国の法律を守ることは当然のことで、いやなら進出はできない。グーグルは中国市場の可能性に賭けて、ビジネス上の割り切りをしたのだ。
しかし、今回のサイバー攻撃を契機に、グーグルは、中国における事業方針を転換し、「ネット検閲を行わない」ことを宣言、それがかなわなければ、撤退も辞さない構えだ。
全人代決定に基づき、膨大な検閲
中国におけるネット規制の最も重要なものは、2000年12月28日第9期全国人民代表大会常務委員会第19回会議で採択された「インターネットセキュリティー保護に関する決定」である。
この「決定」に基づいて、各種の法律が作られ施行されている。そしてこの「決定」で定められたネット上の16種類の違法行為について、刑法に基づいて刑事責任を追及するのである。
そこには、ハッキングや猥褻、ネット詐欺などに加えて、インターネットを用いて「国家政権や社会主義システムの転覆、国家分裂や統一国家の解体を煽動したりする」「国家機密、機密情報または軍事機密を盗み出したり暴露したりする」「民族的怨恨、民族的差別を煽り、民族的団結を破壊する」「カルト組織を結成し、組織メンバーと連絡を取り、国の法律、行政法規の実施を阻止する」など違法行為が記載されている。
在中国のインターネット関連企業の多くは、このようなある種漠然とした規定に対応して、政府が実際には禁止しないかもしれないコンテンツまでも大量に検閲していると言われている。