1月17日、ウクライナで大統領選挙が行われた。その結果をロシアはどう受け止めているだろうか。

 選挙結果は、「親ロシア派」と言われるヤヌコビッチ前首相が優勢だった。だが、過半数には届かなかったので、2月7日に決選投票が行われることになった。

 ヤヌコビッチのあとを追っているのは、親欧米派から親ロ派に転じたと言われるティモシェンコ現首相だ。ヤヌコビッチがそのまま押し切るのか、それともティモシェンコが逆転して勝つのか、日本のマスコミの関心はその点に絞られている。

 だが、ロシアにとっては、最初の選挙の結果で十分である。ロシアを敵対視し、北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指してきたユーシェンコ現大統領は5%しか得票できず、レースから脱落してしまった。米国がロシアを牽制するためにウクライナを支援してきたが、その戦略が失敗したこともあって、ロシアは選挙の成り行きを安心して眺めている。欧米の新聞も一斉に「ウクライナの大統領選挙ではロシアが勝った」と論評している。

ウクライナと距離を置いてきたロシア

 2004年に行われた前回の大統領選では、ヤヌコビッチはプーチン大統領(当時)の支持を得ていたにもかかわらず、敗北した(勝利したのが反ロの「オレンジ革命」を率いたユーシェンコである)。だが、今回ヤヌコビッチはおよそ35%の票を得て、レースの先頭に立っている。

 前回の選挙で、ロシアはウクライナの内政に干渉しない方がいいという教訓を身につけた。今回もロシアが大統領選挙に干渉することはなかった。選挙結果に対しても、表面的には慎重に反応している。

 だが、今回の選挙の結果を受けて、メドベージェフ大統領はすぐにロシア大使をキエフに送り込んだ。

 2009年5月に任命され、ウクライナからの承認も受けていた新ロシア大使は、首都キエフに赴任しなかった。そのため、6月からウクライナの首都キエフには、ロシア大使が駐在していなかった。この半年間、駐在大使がいないという異常事態になるほど、両国の関係は冷え切っていたのである。