21日の米国株は、オバマ大統領が大手金融機関に対する新たな規制案を発表したことが最大の売り材料になり、前日比▲213.27ドルの急落となった。▲200ドルを超える下げ幅を記録したのは昨年10月30日以来のことである。終値は10,389.88ドルで、昨年12月18日以来の安値になった。

 このほか、中国の金融引き締め強化への警戒感(1月21日作成「『中国リスク』に神経質な米国株」参照)から商品相場が軟調に推移して、素材株の売り材料になった。発表された米景気指標が市場予想比で下振れたことも、株安につながった。米1月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は+15.2(前月比▲7.3ポイント)。内訳の新規受注は+3.2まで低下した。1月16日までの週のイニシャルクレームは48万2000件に急増(前週比+3万6000件)。年末年始の特殊要因があったわけだが、4週移動平均が44万8250件に増加したこともあって、市場は材料視した。

 大手金融機関の自己勘定による売買の制限やヘッジファンドなどへの投資禁止、バランスシートの肥大化を防ぐための預金以外も含めた負債規模の制限といった新規制案を導入する方針を明らかにしたオバマ大統領の声明文には、次のようなくだりがある。

「われわれは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)やその他のデリバティブといったリスクの高い金融商品を大手金融機関が規制されないまま売買するのを許容してきた抜け穴をふさぐつもりだ」

「アメリカの納税者が大きすぎてつぶせない(too big to fail)銀行によって人質にとられるようなことは、決して二度と起こらないだろう」

「われわれは顧客に奉仕するという中心的な使命から銀行があまりに遠くまでかけ離れてしまうことを、もはや許容すべきでない」

「もし金融機関が利益のために売買したいのなら、それは自由だ。もちろん、責任を持ってそうしたことを行うのは、市場や経済にとって、よいことである。しかしこれらの機関が、アメリカの人々によって支えられた銀行を経営するかたわら、ヘッジファンドやプライベートエクイティファンドを経営するのは、許されるべきでない」

 オバマ大統領が2009年1月20日に就任してから、1年が経過した。この間、支持率は大幅に低下。マサチューセッツ州で行われた上院補選で民主党が敗北したことで、上院の民主党議席数(系列無所属を含む)が60を割り込み、野党共和党の議事妨害を排除できない状態に。大統領が熱意を示している医療保険制度改革の行方にも黄信号が点った。しかも、11月には中間選挙が控えている。