1月20日の米国市場を揺さぶったのは、「中国リスク」。バブルを警戒している金融当局の引き締め措置によって中国の経済成長が減速し、世界経済全体に悪影響が及ぶことが警戒された。ニューヨークダウ工業株30種平均は一時、前日比▲200ドルを超える下げ幅に。リスク回避志向の強まりから米国債利回りは低下。10年債は3.63%をつける場面があった。
中国の高い経済成長が内包する様々な矛盾や歪みを、筆者は昨年11月13日に作成した「中国の高い経済成長」の中で指摘した(PHP文庫『2010年中国経済攻略のカギ』にも筆者コメントが収録されている)。人為的な高成長は、どこまでも続くものではない。特に、金融危機発生後の景気対策で、銀行融資のバルブを全開にしたことが、資産価格バブルや過剰な設備投資、さらにはインフレ懸念につながっており、中国の当局者も問題視せざるを得ない状況になっている。
中国人民銀行は、手形金利の引き上げに加え、1月12日には預金準備率の0.5%引き上げを発表。さらに、20日には中国銀行業監督管理委員会の劉主席が「慎重な監督体制の下で数多くの規制上の要件を課している。これらの基準を満たせなかった銀行には融資を制限するよう伝えた」と語ったことがブルームバーグなどによって報じられ、中国の金融引き締め強化を警戒するムードが一層広がった。1月前半の人民元銀行融資増加額が1兆1000億元を超えたという報道が出てきたが、劉主席が明らかにした今年の目標額は7兆5000億元。旧正月を控える時期の急激な人民元融資増加を座視することができず、当局は融資制限を命じることになったのだろう。国有銀行の一部は融資停止に動いたと伝えられる(ウォールストリートジャーナル・アジア版など)。また、一部の銀行は人民銀行から、過剰貸し出しへの懲罰的な措置として、預金準備率の一時的な引き上げを命じられたという(ロイター)。
このところ堅調に推移してきた米株式市場の参加者でさえも、米国経済の構造不況からの早期脱出には、内心で十分な自信を持つことができていないように見受けられる。そこで、世界経済回復の原動力として中国の力に期待を寄せることになり、中国の政策当局の一挙手一投足に一喜一憂することになっているのだと考えられる。
その後、21日昼に、中国の一連のマクロ経済統計が発表された。最も注目された昨年10-12月期の実質GDPは、前年同期比+10.7%に加速した(2ケタ成長は2008年4-6月期以来)。