南西方面の雲行きが気になっている。と言っても、天気の話ではない。防衛省が2012年度の概算要求に用地取得費など15億円を計上した、陸上自衛隊の与那国島配備についてである。

 与那国町民1600人のうち500人余が計画撤回を求めて署名したとして、10月12日に反対派団体が防衛省を訪れ、神風英男政務官と面会したという。

与那国町

 こうした反対運動は織り込み済みかと思われるが、「強引にことを進めていいのか」といった声が出てきそうなので、改めてここで、この計画が持ち上がった経緯を振り返ってみたい。

 与那国島は沖縄本島から約500キロ、九州南端の鹿児島から1000キロの距離にあり、日本の最西端である。ちなみに台湾までは111キロと程近い。

 大雑把に言えば、沖縄本島→宮古島→石垣島→与那国という順番で西に向かって並んでいて、宮古・石垣・与那国は総称して「先島諸島」と呼ばれている。

 与那国島は、1時間くらいあれば車で島を一周できる。私も昨年訪れたが、さりげなく与那国馬が歩いている、ほのぼのとした島である。

 しかし、止まらない人口流出という深刻な問題を抱えている。現在約1600人。島には高校がなく、中学を卒業すると島を出ていかざるを得ない。子供だけを下宿させる余裕もないということで、家族ごと与那国島を出ていってしまうケースが多いのだ。

那覇の「F-15」が与那国に到着するまで40分はかかる

 さらに深刻な問題は、与那国が国境の島でありながら、いわば防衛の空白地帯となってしまっていることだ。