新年あけましておめでとうございます。今年も、男性にとって耳の痛い話が多くなるかと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。

 こう書いてふと思い出したのは「兎のさかだち」という言葉で、書棚から同名のエッセイ集を抜き出してみると、作者である富岡多恵子氏曰く、「大阪の昔のシャレ言葉です。兎のさかだちで耳が痛いわけです」とのこと。

 「読者がちょっと耳が痛いなあと思ってくれればいい、とひそかに期待しているところがあります。しかし、じつは、その前に、筆者のわたしの耳が、ひとの声とさかだちで痛くなっていたのです」と「あとがき」にあって、僭越ながら右に同じと共感するしだいです。

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 さて、昨年4月の連載開始から今回で22回、「結婚のかたち」について飽くことなく書いてきてつくづく思うのは、われわれの社会においては、女性と子供とが本当には大切にされていないという現実である。

 そんなことはない、子供は社会の宝であり、希望であり、赤ちゃんを抱く母親より尊い存在はないと反論する人も多いだろう。

 しかしながら、そのとき頭に描かれているのは、まず間違いなく、法律に則って結婚した女性であるはずだ。さらに言えば、結婚した以上、子供を悲しませないためにも夫の多少の不品行や横暴は我慢して、何事につけ自分を後回しにする妻の姿が想定されてはいないだろうか。

 私もことさら離婚を奨励するつもりはない。

 ただ、言うまでもないことだが、結婚とはなかなか難しいものである。

 まして日本の男性は、男として妻と子供を守るどころか、まずは自分こそが保護されるべきだという甘ったれ気質を脱却しないまま、体だけ大人になってしまった者がはなはだ多い。

 かく言う私も、自分の行いを顧みるにつけて、忸怩たる思いを禁じ得ない。妻に暴力を振るったり、無闇に怒鳴ったりすることこそなかったが、これまでの結婚生活を振り返れば、よく続いてきたと冷汗が出る。

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 それにしても、日本ほど離婚した女性に冷たい国はないのではないだろうか。

 なるほど、離婚が認められるのための要件は緩和されて、離婚自体はさほど難しいことではなくなっている。

 問題なのは、離婚後の女性の生活が立ち行かなくなることで、厚生労働省の調査によれば、離婚した母子世帯の平均年収は210万円(2005年)で、全世帯平均の4割にも届かない。