体調不良で検査入院中の藤井裕久財務相の辞任報道が、5日夜以降に相次いでいる。
共同通信は5日22時38分、「藤井財務相辞任へ」と速報。体調不良を理由に同財務相が辞任することが固まったと、与党関係者の話をもとに報じた。6日の朝刊各紙は、鳩山由紀夫首相との5日の会談で藤井財務相が健康不安を理由に辞意を表明し、首相は慰留したものの本人の辞意は固いと、一斉に報じた。後任として、野田佳彦財務副大臣や峰崎直樹財務副大臣の昇格、仙谷由人行政刷新相の兼務、菅直人副総理・国家戦略・経済財政相の兼務などの案が浮上しているという。
2010年度予算案編成にあたり、「国債44兆円枠」をしっかり守ることの重要性を最も強調していたのは、藤井財務相。就任当初、介入を含む日本の為替政策に関する発言内容を市場で材料に使われてしまい苦慮したのも、藤井財務相である。18日に召集される通常国会では、財務相が財政演説を行うほか、2010年度予算案および2009年度第2次補正予算案の審議で、財務相が答弁に立つ機会は多い。「今辞められると、本当に困る。特に国会答弁はある程度の見識や力量が必要だ」と財務省幹部が語っているという(1月6日 産経新聞)。
仮に、藤井財務相が交代する場合、市場にはどのような影響があるだろうか。この問題を考える上では、次の2つの点を押さえておく必要がある。
(1)2010年度予算案等が決まり、いわゆる「予算の季節」が終わったことで、債券市場が財政規律の問題を材料視する時間帯には一区切りついていること。
(2)ドル/円相場が足元で円安ドル高方向に揺り戻しているため、財務省が円売り介入の実施を決断するかどうかというテーマがいったん棚上げになっていること。
(1)について付け加えると、7月に投票が行われる参院選までの半年間(事実上は2010年度予算が可決成立した後の4-6月期)に、さらに景気対策を打ち出す必要性が生じた場合には、2010年度予算案に計上されている1兆円の「経済危機対応・地域活性化予備費」と、同じく1兆円の「非特定議決国庫債務負担行為限度額」、計2兆円が活用される段取りになっている。したがって、参院選前に国債のさらなる増発が問題になる可能性は乏しい。さらに言えば、参院選の結果次第では政権の枠組みに影響が出てくることも考えられる。内閣改造が行われる可能性があるわけで、その場合、2011年度予算案編成にあたるのは、新たな財務相ということになる。