1月4日の仕事始めに各企業のトップが社員向けに発信したメッセージの概要が、マスコミを通じて報道された。筆者は毎年、この企業トップ年頭所感の内容をチェックして、そこから浮き彫りになる傾向を把握することを、年初に必ず行う仕事の1つにしている。
世界経済の潮流変化に敏感な商社のトップからは、次のようなメッセージが出された(以下、発言の引用は時事通信から)。「ピンチをチャンスに転じる」「リスクをとる」ことによって活路を開こうとする発想が、最大の特徴である。
「既成の枠組みにとらわれず、グローバルな視点で挑戦を続けてほしい。2010年は未来への挑戦が始まる年だと思っている」(商社)
「変化の激しい時代には、リスクをとらないことがリスクだとも言える。できない理由を並べるのでなく、必ずやり抜くとの強い意志を持ち、どうすればできるか考えて行動していこう」(商社)
「現在は不況や新興国の台頭、環境意識の高まりに伴う技術革新などの変化が一度に起こり、まさに時代の転換期を迎えている。今こそがチャンスの時であり、これまで以上にすばらしいビジネスを創り出してほしい」(商社)
その他の様々な業界のトップからも、「守りから攻めへの転換」「新しい発想」といった言い回しで、積極性や工夫などを求める、以下のようなメッセージが発信された。アジアなど海外市場への期待を口にしたトップも少なくなかった。
「経済の大きな流れの中では守りの姿勢を続けていかなければならないが、守りのみではなく、新規に収益のベースとなる事業を積極的に加えていかなければならない。今年は『守り』から将来を見据えた『行動』への転換の年だととらえている」(リース)
「いかに外部環境の変化に適応していくのかが成長の鍵だ。その際、単一の事業を行う企業よりも、多様性に富み、柔軟性がある企業の方が変化に勝ち抜くことができるのは自明の理ではないか。自らのスタイルを変えることと、新しいものに挑戦することがわれわれの課題だ」(通信)
「経営環境は非常に厳しく、楽観は許されないが、過度に保守的・悲観的になることなく、やるべきことを自信を持ってやり抜いていくことが大切だ」(化学)
「時には前例や常識にとらわれず、従来の延長線上にない視点で発想することが大切だ。われわれも、ある時は上下を逆さまに、またある時は鳥の目・虫の目でと、ものの見方をさまざまに工夫しながら、新しい発想でチャレンジしていこう」(都市ガス)
「この不況下で当社が『勝ち組』として生き残るためには、社員一人ひとりの『気づく力』と『スピードある挑戦』が必要不可欠だ」(住宅メーカー)
「消費市場ではプライベートブランドや低価格商品が台頭し、過当な価格競争を繰り広げている。こうした厳しい事業環境に迅速に対応しながら、『100年に一度のチャンス』と前向きにとらえ、常に新しいことにチャレンジし、『強くて速い会社』を目指す」(日用雑貨メーカー)
「国内市場はデフレ経済や少子化の影響で需要の伸びは期待できず、今後は拡大するアジア市場でいかに新たな需要を創出し、存在感を高めていくかが、成長に向けた最大のポイントになる」(鉄鋼)
「将来の景気回復に先駆け、市場を上回る成長を実現するため『峻別と集中』を一層強化し、『国内事業の成長性回復』と『海外事業での成長性の拡大』をより確実なものとして取り組みを進めていきたい」(化粧品)