世界経済が金融危機に見舞われる中で、中国経済だけが先陣を切って景気回復に向かっている。中国経済はこのまま成長し、世界経済回復のエンジンになるのだろうか。

中国の実質GDP伸び率の推移(中国国家統計局の発表に基づいて筆者が作成)
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 振り返れば、中国にとって2008年は五輪の年であり、金融危機がなければ、間違いなく2桁成長が実現できたはずだった。だが、そこに青天の霹靂とも言うべきサブプライムローンの問題が発生した。この問題は金融システム全体に影響し、米投資銀行の老舗のリーマン・ブラザーズを倒産させてしまった。

 経済のグローバル化が進む中で、金融危機のツナミは米国にとどまらず、中国にも襲いかかった。中国の2008年の経済成長率(実質GDP伸び率)は、2007年の13%から9%に大きく鈍化してしまった(図を参照)。

「谷」から「山」へと転じる中国経済

 2009年の中国経済は、政府が掲げる8%の成長目標を達成できると思われるが、2008年の成長率には及ばず、8.5%前後になると見られている。

 見方次第で、この8.5%前後の成長に関する評価は大きく分かれる。1つは金融危機に見舞われる中で8.5%の成長が実現できただけでも評価すべきというポジティヴな見方である。何よりも、この成長水準は世界最高のレベルである。

 それに対して、中国経済の潜在成長力から見れば最低でも9%成長しなければならないのに、経済運営が失敗したというネガティヴな見方もできるだろう。

 しかし、これまでの経済政策にミスがあったにせよ、積極的な財政政策と金融緩和政策によって経済成長が回復に向かっているのは事実だ。

 問題は2010年の中国経済がどのようになるかである。

 仮に2009年の中国経済が谷だったとすれば、2010年はまた山になると予想される。その理由の1つは上海万国博覧会と広州アジア大会といった国際イベントによる景気浮揚効果が考えられる。国際イベントの開催は単に関連の公共工事が増えるだけでなく、ヒトとモノの移動により消費が活性化する。

 もう1つは、現在実施されている4兆元の財政出動のうち、半分の2兆元が2010年に実施されることである。