マット安川 外交の専門家ではない野田佳彦総理が外務大臣に任じたのは、これも専門外の玄葉光一郎大臣。お互いに外交とは無縁の方々で、増長するロシア、中国に対応できるはずがない、と断じたのが今回のゲスト・佐藤優さん。ノーサイドというわけにはいかない日本の外交問題をどうすべきか、お聞きしました。
「いわゆる平和条約」・・・!? 玄葉外相さっそく大ポカ
元外交官、文筆家 インテリジェンスの専門家として知られる。第38回大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『自壊する帝国』の他、『獄中記』『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』『3.11 クライシス!』など著書多数。近著に『世界インテリジェンス事件史』。(撮影:前田せいめい、以下同)
佐藤 野田新総理が「ドジョウ宰相」ともてはやされています。自らをドジョウになぞらえたあの演説、よかったと思いますか?
詩人の相田みつを氏の作品から引用されたものですが、よく居酒屋のトイレに貼ってあるようなフレーズで国政を語るということ自体に、私たちは違和感を覚えないといけません。
なのにマスコミはやたらと持ち上げる。相も変わらずいいかげんです。仮に前原(誠司)さんが勝っていたら、「金魚」は彼に対するあてこすりで、自分はドジョウとひねくれたせいで負けたんだという論調になっていたことでしょう。
さっそく失言で閣僚のクビが飛びましたが、それにも増して見過ごせないのは防衛大臣の人選です。
一川保夫さんといえば農業の専門家ですよね。国民目線で判断するなどと言いますが、安全保障の問題を国民目線で判断してもらっては困る。
国民は痛いこと、怖いこと、ましてや鉄砲を撃つことも嫌いです。そういう意識では中国や北朝鮮から日本を守れません。
玄葉外相にしても、北方領土問題でいきなりポカをやらかした。「平和条約を締結する」ではなく「いわゆる平和条約を締結する」と言っちゃったんです。
外交のプロからすれば、「いわゆる」が付くと付かないとでは意味が大きく違ってきます。日本はだいぶ腰砕けになったと解釈されても仕方がありません。