中国・青島(チンタオ)――。ドイツ租借時代に始まったビール生産が世界的に有名だが、今では大手家電のハイアールグループ(海爾集団)などが本拠を置くハイテクの街として急成長中。2008年北京五輪でヨット競技の会場に選ばれると、高層ビルの建設ラッシュが始まり、政府の景気対策を背景にバブルがなお膨らみ続けている。(2009年11月22~25日現地取材、AFP提供以外の写真も筆者撮影)
日清戦争後、青島に侵攻したドイツ軍が1898年に租借地とし、駐留兵士に飲ませようとビール工場を建設した。その後、日本軍占領を経て、第2次大戦後は米軍が艦隊の司令部を設置。1949年に中国人民解放軍が青島を解放し、1980年代以降は改革開放政策の下で山東省の中核都市として急速な発展を遂げている。
青島は歴史の荒波に翻弄され続けてきたが、青島ビールは一貫して中国の戦略的輸出商品であり、その工場は街のシンボル的存在。アサヒビールと資本提携し、更なる業容拡大を目指している。工場周辺にはドイツ風の古い街並みが残され、時計の針が止まっているような錯覚に陥る。
不動産が牽引する景気回復、五輪後も続く建設ラッシュ
一方、新市街では五輪閉幕から1年以上過ぎたのに、各所でビルの建設工事が続けられていた。超高層ビルの集積度は東京・新宿を凌ぐように見える。「バブル崩壊」が心配になるが、取材したハイアールの幹部は「当局が何度も引き締めようと試みたが、地価は上がり続けるという『土地神話』が根強い。不動産ブームは続くだろう」
実は、ハイアールやハイセンス(海信)など家電業界の雄さえも不動産事業に乗りだすほど、オフィスビルやマンション、ショッピングモールの建設ラッシュに沸いているのだ。
海に囲まれた青島は中国海軍の要港であると同時に、避暑・避寒に適したリゾート地として人気が高い。美しい海岸線沿いには、瀟洒な別荘が立ち並んでいる。地元の人に聞くと、日本円なら1億円以上もする物件だという。
2008年9月のリーマン・ショック以降、中国政府はその影響を最小限に食い止めるため、4兆元(約60兆円)規模の景気対策をいち早く打ち出した。住宅ローン金利を引き下げ、不動産開発に義務付ける自己資金規制を大幅に緩めた。
大和総研によると、2009年上期の中国の固定資産投資に対する不動産は22.2%を占め、製造業の31.9%に次ぐ(月刊資本市場2009年9月号)。国家主導でバブルを膨らませながら、不動産事業が景気回復のエンジンを担う構図だ。
しかしながら、共産党政権は土地私有を禁じている。市場で取引されるのは、あくまで土地の使用権と建物だけ。土地自体は国民や企業が政府から最長70年間借りる制度である。
換言すれば、公共事業を実施する際に土地が必要になれば、政府はその使用者に「正当な」対価を払って返還してもらえる。だから、財政出動決定から実体経済に刺激を与えるまでのタイムラグを短縮できる。