12月1日作成「白川日銀総裁の『デフレ認定』」で筆者が行った指摘・問題提起への回答が、日銀からその日のうちに出された。同日早朝に上記リポート執筆後、地方出張に筆者が出ていた間に、14:00から臨時金融政策決定会合を日銀は開催。15:38に追加緩和についての決定内容が、「金融緩和の強化について」と題した対外公表文で明らかにされた。

 「新しい資金供給手段の導入によって、やや長めの金利のさらなる低下を促すことを通じ、金融緩和の一段の強化を図ることとした」と、公表文の冒頭に、日銀は明記。やや長めの金利、すなわち「ターム物金利の低め誘導」というのが、今回決まった追加緩和の基本的な位置付けである。そこには、後述する白川方明総裁発言にあるように、市場に対する「時間軸」的なメッセージも込められている。また、白川総裁は「量が制約となって金融機関行動が制約されない状況をしっかりと作り出すという意味で、広い意味での量的緩和だ」とも、会見で述べた。

 日銀は今回、経済・物価情勢判断は基本的に据え置いたものの、「このところの国際金融面での動きや、為替市場の不安定さなどが企業マインド等を通じて実体経済活動に悪影響を及ぼすリスクがあり、この点には十分な注意が必要である」として、「ドバイ・ショック」や円高が景気「二番底」リスクを高めていることへの警戒感を示した。その上で、「きわめて低い金利でやや長めの資金を十分潤沢に供給することにより、現在の強力な金融緩和を一段と浸透させ、短期金融市場における長めの金利のさらなる低下を促すことが、現在、金融面から景気回復を支援する最も効果的な手段であると判断」して、「新しい資金供給手段」の導入を、全員一致で決定した。公表文にはさらに、「日本銀行としては、今回の措置が、政府の取り組みとも相俟って、日本経済の回復に向けた動きをしっかりと支援していくものと考えている」「日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行として最大限の貢献を続けていく方針である」といった、11月30日の白川総裁講演と重なり合う、デフレ克服に向けた政府との日銀の協調姿勢をアピールする内容が、しっかり盛り込まれた。

 新たに導入されるオペは、政策金利と同水準の0.1%で、3カ月物の資金供給オペを10兆円規模で行うもので、共通担保方式を取る(担保として国債、社債、CP、証書貸付債権などすべての日銀適格担保を受け入れる)。

 また、白川総裁は会見で、新しいオペについて、「3カ月で0.1%という資金を供給する姿勢を示すことは、2つの意味で効果がある。1つは、日銀が現在の低金利を続けることを通じて景気を支えていくという姿勢が十分に浸透していない面があるとの指摘もある。そうだとすれば今回、固定金利の3カ月のオペを出すことは、それだけ姿勢が明確に伝わる。それを通じて、金利に対して影響があると思う。あとは、3カ月の資金を出すという需給的な効果が長めの金利を下げていく。これだけで大きな効果があるというわけではなくて、2つの効果が相まって、下げていく効果をそれなりに期待している」と述べた。この発言は、超低金利を粘り強く続けていくという「時間軸」的なメッセージと、実際に資金供給が増加することの両面から、ターム物金利がさらに低下する効果を日銀がみている、ということである。

 白川総裁は、今回の決定が円高の抑止につながることも期待しているようである。会見では、「日銀はかねてより、極めて低い金利を維持するということを十分に伝えているつもりではあるが、なおもし十分に伝わってないとすれば、そういう方針であることがあらためてより理解されれば、それは少し長い時間をかけて市場にも相応の影響を及ぼしていくと考える」という発言があった。