日本株の低調ぶりが際立っている。ドルの信認低下を背景にした急激な円高進行、あるいは新政権への政策不信など、主要メディアは連日その理由を掲載している。
だが、実は、最大の原因にはほとんど触れられていない。低調の主因は、このところ相次いでいる主要企業による公募増資、すなわち株式発行を伴う資金調達にある。
一般メディアでは決して触れられることのない「公募株のハメコミ」を軸に、危うい一面を切り取ってみよう。
公募増資は市場の需給関係を崩してしまう
そもそも公募増資とは何か。
野村證券の用語解説集によれば、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘することを募集といい、これを通常は公募と呼んでいる~(中略)~企業は、公募形式によって有償増資をおこなうことが多い」とある。
ここ数カ月の間に、三菱UFJフィナンシャル・グループ、日立製作所、日本郵船、NECなどの案件が主要紙の見出しをにぎわしたのは記憶に新しいところ。
昨秋からの金融市場の動揺が収まったことを契機に、各社は新規投資、あるいは事業再編の原資としての資金調達に踏み切る。市場筋の推計によれば、昨年1年間のファイナンス額は約1兆7000億円、これに対し、今年は年間合計が約5兆円に達するとみられている。
こうした資金調達の何が問題なのか。
ずばり、市場の需給関係を崩してしまうことがやっかいなのだ。