日本の社会では嫌われるようだが、会社の中で往々にして昇進するのは上司・先輩の機嫌を取る「ヒラメ」のような人間である。
オーソドックスな経営学によれば、経営者の条件として、先見性とか独創性、統率力などの能力が強調される。だが現実的には、経営者になるための条件は、仕事の能力よりも人間関係をどれほど上手にこなせるかが決め手となる。
そもそも株式会社の究極的な目的は、株主の利益を最大化することにある。経営者が株主によって雇われているため、日々の経営は株主の顔を意識しながらやっていかなければならない。
しかし現実的には株主の企業所有権が分散されているため、経営者を決める権限を行使できないことが多い。その結果、経営者の人事に大きな影響を与えるのは、すでに引退しているにもかかわらず、なお影響力を持つ旧経営陣である。
中国で経営者になるためには、人脈がモノを言う
中国において、経営者になる条件はどのようなものだろうか。
国有企業の場合、基本的には共産党員であることが前提である。国有企業の最大株主が共産党であることを考えれば、それは当然の結果だ。
ただし、共産党員という身分はただの資格であり、実際に経営者になるには、共産党組織と所轄官庁との人脈が重要な決め手となる。
現状では、大手国有企業の人事権は、共産党中央が握っている。したがって、国有企業の経営は、総経理(社長)よりも共産党書記の方が実権を握っていると言ってもよい。
1990年代、国有企業の経営を活性化させるための改革として、行政機能と企業経営機能の分離、いわゆる「政企分離」が進められた。その狙いの1つは、企業経営の権限を党書記から総経理に移行し、経営の目的を利益の最大化に特化することにあった。
しかし、近年の市場拡大を背景に、改革の声はトーンダウンしている。国有企業は市場を独占して利益を最大化することばかりに気を取られ、経営の合理化や技術力強化などの取り組みを行わなくなった。
その一方で国有企業の党書記と総経理は、政府から手厚く保護してもらうために、所轄官庁に対するロビー活動を強化している。例えば、現在執行されている4兆元に上る景気刺激の財政出動は、国有企業がそのほとんどを受注している。
本来ならば、国民の税金を使った公共工事なのだから、透明かつ公正な入札手続を講じる必要がある。品質が高く、入札価格が安い企業が優先的に落札できるようにすべきだろう。しかし、国有企業の経営者は、所轄官庁との癒着をバネに、入札を優位に進めている。