危機管理における情報活動には、急速に変化する状況を把握しながら、運用者側の要求に応じ、必要な情報を迅速に収集、分析、処理して、危機への対応行動に間に合うように報告しなければならないという、大変なストレスを伴うのが常態である。

 このような厳しい要求に応ずるためには、危機管理上踏むべきいくつかの原則がある。しかし今回の政府の対応は、残念ながらこれら原則から外れた面が多々あり、事態を悪化させていると言わざるを得ない。

危機管理の原則から大きく外れた福島第一原発事故対応

福島第1原発のセシウム137放出量、広島原爆の168個分 政府試算

事故を起こした福島第一原発で始められた原子炉カバー設置工事(2011年8月10日)〔AFPBB News

 今回の福島第一原子力発電所事故に対する政府の対応は、危機管理の原則から外れた面が多々あり、極めて問題がある。この点は、情報活動においても同様である。

 現在の制度の下では、日本の国家情報活動は、情報を使用する側の要求元であるユーザー、国家情報であれば対策本部長である首相または官邸が情報要求を示し、それを受けて内閣情報会議がそれぞれの情報要求を各省庁の国家情報機関に示す。

 各機関は、内閣情報官の総合調整のもと、情報を収集、評価、分析して内閣情報官に報告する。その成果は最終的に内閣情報会議などにより、総合的に調整評価され、その結果が官邸に報告されるという流れで進められることになっている。

 しかし現実には、そのような既存の制度は活用されず、情報の組織も活動も、報告、活用と情報の開示も、官邸の恣意的な場当たり的判断に委ねられてきたと言って過言ではない。

 以下のような種々の問題点があり、危機時の情報活動としては、最もあってはならない姿であった。