10月のニューヨークダウ工業株30種平均の軌跡は、マーケット全体がたどるであろう今後の大きな流れを考える上で、大変示唆に富むものになったと、筆者は考えている。

 まず、事実を並べてみよう。

 10月最初の営業日である1日のニューヨークダウは、大幅に3日続落し、前日比▲203.00ドルの大幅安で、終値は9509.28ドル。株売り材料になったのは、米9月のISM製造業景況感指数が低下に転じたこと。200ドルを超える下げは、7月2日以来だった。

 その後、米企業の7-9月期決算が、売上高はともかく、利益の面では事前予想からの上振れが目立ったことから、ニューヨークダウは1万ドルを回復する堅調な値動きになった。だが、タルーロ米連邦準備理事会(FRB)理事らによる金融システムの実情についての厳しい見立てと株価の動きとの間には、覆い難いギャップが横たわっていた(10月15日作成「NYダウ1万ドル台回復」参照)。

 29日には、米7-9月期の実質GDP暫定推定値が発表され、前期比年率+3.5%という数字になった。5四半期ぶりのプラス成長である。発表直前の市場で米大手投資銀行が前期比年率+3%未満へとGDP予想を下方修正する動きがあったため、同+3.5%という数字はポジティブサプライズになり、株価は急伸。ニューヨークダウは9962.58ドル(前日比+199.89ドル)の大幅高になった。上昇幅は7月15日に記録した+256.72ドル以来の大きさ。だが筆者はむしろこの時、終値の上げ幅が200ドルにわずかに届かなかったことに強い印象を受けた。株価上昇力の限界を見た思いがしたからである。GDPを押し上げた個人消費や住宅投資のプラス寄与の背後には、明らかに政策効果があった。次の10-12月期の実質GDPは減速が避けられないことを、市場は感じ取っている。

 そして、10月最終営業日でもある、翌30日。米国株は急反落した。ニューヨークダウは前日比▲249.85ドルとなり、終値は9712.73ドル(10月5日以来の低水準)。下落幅は4月20日(▲289.60ドル)以来、約半年ぶりの大きさになった。