今まで米中関係は、ある決まった方程式に沿って展開されていた。アメリカ大統領が就任した直後は、中国の人権侵害の状況を批判し、厳しい姿勢で人権外交を展開する。自由と人権を尊重するアメリカの基本的価値観が中国の現状と相いれないのは言うまでもない。中国を「指導」し「矯正」しなければ正常な米中関係は築けないという態度である。

 しかし毎回のことだが、大統領就任から3年目に入ると、中国の人権問題に対する批判はトーンダウンし、両者の関係が改善する。

 米中関係のこうした基本的な図式が、オバマ政権になってから根本から変わった。依然としてアメリカ政府は中国の人権侵害の状況について不満を表明するが、執拗に批判することを避けている。

 その背景に、アメリカの国力低下と中国の台頭がある。西太平洋地域において、アメリカはかつてほどの兵力を投入する財力はもはやなく、地域の安定と平和を維持するために中国に協力を要請するしかない。

バイデン訪中で中国に米国債の追加保有を要請

 こうした大きな流れの中で、アメリカのバイデン副大統領が8月17日から22日にかけて中国を訪問した。

 バイデン副大統領はまず北京を訪れ、胡錦濤、温家宝、習近平らと個別に会談した。今回の訪中の意味について、マスコミや国際関係の評論家の間で様々な指摘が見られる。まず、副大統領が訪中しても、ほとんど現実的な意味がないという指摘がある。一方で、中国の次期国家主席の本命と目されている習近平と会談したことで、アメリカはポスト胡錦濤の中国と確かな関係を築くことができたとも言われている。

 バイデン訪中には具体的にどのような意味があったのだろうか。

 今のアメリカを取り巻く国内外の情勢を考察すると、まず、国内では国債の信用格付けが引き下げられ、アメリカ経済が窮地に追い込まれている。

 アメリカにとり、中国は米国債を最もたくさん保有している国である。信用危機に陥っているアメリカ経済は、中国の助けを必要としている。したがって、今回バイデンの訪中の目的の1つは、中国に米国債の追加保有を要請することであった。