「ミスター加藤、今君がいる北京で反日デモが起こった責任は日中どちらにあると思う?」
2005年4月9日22時30分。香港系フェニックステレビの生中継トーク番組で、キャスターから問われた。初めての本格的なテレビ出演。背筋が凍りついた。
中国に非と言えば強制帰国の危険性も
「ここは中国。中国の責任と言えば、『政治的に不合格(political incorrect)』になる。強制帰国になるかもしれない。かといって、日本の責任と言えば、『売国奴』と見なされ、お国に帰れなくなるかもしれない」
一瞬の間に色々考えた。少しだけ深呼吸して、平静を装って答えた。
「昨今において、歴史認識問題は日中両国に跨る外交マターになっています。そうであるからには、関係改善には『双方』の絶え間ない努力が必要なことは言うまでもありません。『一方通行』の解決はあり得ないと思います。私は日本国民として、歴史を直視する勇気を持ちたいと考えますし、政治家にもそうあってもらいたいと切に願っています」
帰宅途中、「なぜあんな曖昧な言い方を」と反省したのを覚えている。ただ、その後言論・執筆活動を通じて、中国の各界の関係者とコミュニケーションを重ねるうちに、「なるほど、ああいうふうに答えるしかなかったんだ。それだけ深く、複雑な問題なんだ」ということに気づいた。
「あの体験」は、筆者にとっての、「日中歴史認識入門」だった。
日本人漫画家による「私の八月十五日展」で思うこと
さて、先週2回に分けて、本サイトで作家の石川好さんのインタビューが掲載された。石川さんが、3年がかりで南京「大虐殺記念館」での日本人漫画家による「私の八月十五日展」開催を実現した。オープニングは終戦記念日。初日に2万人の観客が駆けつけた。今回はこの記事に即しながら、私の基本的な考え方を述べたいと思う。
歴史認識を巡る反日キャンペーンの一大拠点。2007年12月13日には「大虐殺70周年」を記念して、リニューアルオープンした。多い時で年間600万人が参観する「あの場所」で、あえて8月15日というシンボリックな日を選び、しかも中国では一方的な加害者とされてきた日本側の「戦争体験」を描いた漫画展を開いたというのだから、たまげるしかなかった。