2011年夏の韓国の経済社会を象徴する最大のキーワードは、スマートフォン(高機能携帯電話)だろう。とにかく、スマホに関する大きなニュースが次から次へと飛び出してくる。ケータイ大国韓国はいま、スマホで大揺れなのだ。
8月15日は、韓国では日本の植民地支配からの独立を記念する光復節の祝日になる。2011年は月曜日にあたり、3連休で国内外に旅行に出た韓国人も大勢いた。すっかり夏休みモードだったサムスン電子関係者を震撼させるニュースがこの日の夜、米国から飛び込んできた。
「米グーグルによるモトローラ携帯電話機事業買収」の発表だ。
日本でも大きなニュースになったが、韓国では日本とは比較もできないほど大きなニュースになった。
グーグルによるモトローラ買収で韓国携帯大手に激震
というのも、韓国のサムスン電子、LG電子、ペンテックの携帯電話機大手3社は、いずれもグローバル携帯電話機市場でのメジャー企業であり、また、そろってグーグルのOS(基本ソフト)「アンドロイド」を搭載した携帯電話機を主力商品としているからだ。
日本にとっては「大きな業界ニュース」だが、韓国にとっては「主力事業を左右しかねない重要ニュース」なのだ。
ニュースが飛び込んできた翌日の8月16日午前10時。サムスン電子の李健熙(イ・ゴンヒ)会長は出勤するとすぐに、崔志成(チェ・チソン)副会長兼CEO(最高経営責任者)や携帯電話機事業部門、テレビ事業部門などの責任者を執務室に呼び集め、緊急戦略会議を開いた。
サムスンにとって、今回の買収劇は「想像もしなかった衝撃的なニュース」(サムスン電子役員)だった。
モトローラが苦戦していることは、もちろんサムスンも十分に認識していた。わずか5年前まで、世界の携帯電話機市場で、モトローラはノキアと並ぶ巨人だった。それより前には、モトローラは世界最大のメーカーだった。
だが、ここ数年、「iPhone(アイフォーン)」の大ヒットとサムスンやLGなど新興勢力の躍進で、モトローラの携帯電話機事業はどんどん追い詰められていった。