債券など円金利関連市場の関心は現在、税収下振れに伴う2009年度の赤字国債増発問題以上に、政府による2010年度予算編成の行方に寄せられがちである。この問題について筆者はすでに、10月19日作成「概算要求95兆円超・国債増発」でコメントしているので、ここではあらためて詳述しない。
少なくとも、2010年度の国債(新規財源債)発行額を何とか2009年度補正後の44兆円強よりも抑制しなければならないという政治的な意志(あるいは危機感)を、直近の閣僚発言から感じ取ることはできる。行政刷新会議を主な舞台にした歳出への切り込み度合いを、債券市場も注視することになる。
政府は、財政運営上および国債管理政策上のテクニックを駆使して、債券市場の動揺をできるだけ小さくしようと努めるに違いない。実際、景気・物価状況や日銀の金融政策見通し、民間金融機関の潤沢な余剰資金からみて、長期金利にかかる上昇圧力は限定的なものにとどまるものと予想するのが順当。国債増発という需給面の材料だけで長期金利のトレンドが形成されることはないというのが、過去の経験則であり、筆者の考えである。
しかし、エコノミストの視点から言うと、いま本当に問題になっているのは、そうした債券市場の足元でのマイナーな状況変化ではない。政権交代が実現した後で初めて編成される予算が、財政規律および財政政策への信認を高めるような内容になるかどうかという点の見極めこそが重要である。2011年度以降の予算編成のレールを事実上敷くことにもなるだけに、予算編成「第2ステージ」の主役である行政刷新会議や財務省、さらには最終決定権者である鳩山由紀夫首相に課された責任には、非常に重いものがある。
一方、マクロ経済政策のもう1つの運営主体である日銀はどうか。市場ではこのところ、日銀が企業金融支援のための臨時措置見直しに際して、CP・社債買い入れの停止にとどまらず、企業金融支援特別オペについても打ち切りを画策しているのではないか、という見方が出ているようである。円金利先物はこのところ軟調推移が目立っている。