9月4日から5日にかけてロンドンで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議は、共同声明を発表して閉幕した。この会議は24~25日に米ピッツバーグで開催予定のG20サミットの準備会合という位置付け。金融機関の報酬制限や自己資本規制強化などを巡り、各国の主張がぶつかり合った。一方、景気刺激策からの「出口」戦略については、その議論を行うことには意味があるもののまだ実行に移す段階ではないという点で、意見が一致した。

 ここでは、ほぼ半年前、3月13~14日にロンドン近郊ホーシャムで開催された前回のG20財務相・中央銀行総裁会議が発した共同声明と、今回のそれとを、一部抜粋して比較してみたい。議長国はいずれも英国であり、比較対照しやすい面がある(引用した声明の邦訳は財務省ウェブサイトによる)。

〔1〕【政策協調全般・財政政策】
前回3月声明
「我々は、需要と雇用を喚起するための断固たる、協調した、包括的な行動を取ってきたし、また、成長が回復するまであらゆる必要な行動を取る用意がある」
「財政拡大は、成長と雇用に死活的に重要な支援を与えている。共同の行動はその効果を強化し、これまでに発表された例外的な政策行動は、遅滞なく実施されなければならない。我々は、成長を回復するために必要な規模の継続した努力を行うことにコミットし、国際通貨基金(IMF)に対し、取られた行動と必要とされる行動を評価することを求める。我々は、成長の回復と長期的な財政の持続可能性を確保する」

今回声明
「我々の先例のない、断固たる、協調した政策措置は景気後退を止め、世界需要を喚起するのに役立った。金融市場は安定化してきており世界経済は改善しているが、成長と雇用の見通しについては引き続き慎重であり、特に、多くの低所得国への影響について懸念している。我々は、景気回復が確実になるまで、物価の安定と長期的な財政の持続可能性と整合的に、必要な金融支援措置及び拡張的金融・財政政策の断固たる実施を継続する(Our unprecedented, decisive and concerted policy action has helped to arrest the decline and boost global demand. Financial markets are stabilising and the globaleconomy is improving, but we remain cautious about the outlook for growth and jobs,and are particularly concerned about the impact on many low income countries. We will continue to implement decisively our necessary financial support measures and expansionary monetary and fiscal policies, consistent with price stability and long-term fiscal sustainability, until recovery is secured.)」
「我々は、景気回復がしっかりと確保されていくにつれて、財政政策、金融政策及び金融セクター政策での例外的な支援を戻すための透明で信頼性あるプロセスの必要性について合意した。我々はIMF及び金融安定化理事会(FSB)と協働し、行動の規模、時期及び順序が国及び政策手段の種類によって異なることを認識しつつ、協力的で調和した出口戦略を作成する(We agreed the need for a transparent and credible process for withdrawing our extraordinary fiscal, monetary and financial sector support as recovery becomes firmly secured. Working with the IMF and the FSB we will develop cooperative andcoordinated exit strategies, recognising that the scale, timing and sequencing ofactions will vary across countries and across the types of policy measures.)」

 ~ 政策協調の継続が、今回も確認された。政策効果が息切れした後の景気動向について、各国とも自信を持ちにくい状況であるだけに、「出口戦略」を前面に出すようなことは一切なかった。政策による支援を解除するのはまだ早すぎるという点で、日米欧の足並みは完全に揃っている。