ここ最近のIT関連の大きなニュースの1つに、「トヨタ自動車と米セールスフォース・ドットコムが、ヒトとクルマが会話できるSNS『トヨタフレンド』を共同構築」が挙げられる。
ドライバー、ディーラー、メーカー、そしてクルマ自身が常に情報を提供・共有するという仕組みだ。2012年から新型の電気自動車とプラグインハイブリッドカーに搭載される予定だという。
少し前までは、企業がユーザーに提供するネット上のサービスと言えば、ログインすると「ようこそ○○さま」と待ち構えているようなユーザーサイト(ユーザーのために少しだけカスタマイズされているウェブサイト)が一般的であった。だが、そういう次元はもうとっくに超えたようだ。
また、これまでの「情報を提供する側、される側」という構図も変わってきた。ステークホルダーがみな情報の発信者であり、閲覧者であるという、いわばピラミッド状からダイヤモンド状の情報のやり取りへと変化している。
こういった「ソーシャルネットワーク」型のコミュニケーションの仕組みが、今後、企業のシステムとして普及・定着していくのかどうかを考えてみたい。
実は企業システムには「いい加減」で「精度の低い」情報が多い
企業での利用となると、顧客の声のツイッターからの吸い上げなどはともかく、こういったコミュニケーションツールを社内外の人とのやりとりで使うことに対しては「内容がない、いい加減」「情報の精度に問題がある」というネガティブ意見が出てきて、「うちの会社には合っていない」と直感的に拒否反応を示すケースもあろう。
確かにそういう意見も分からないではない。しかし、企業のシステム全てが「きっちりしたもの」である必要があるかというと、そうではない。実は、そもそも企業のシステムで扱う情報は「いい加減なもの」や「精度が低いもの」がたくさん存在する。それらの情報は決して間違ってそうなっているわけでもなく、不要なものだというわけでもない。
いわゆる「情報系」のシステム(例えば、営業支援、顧客管理、グループウエアなど)に蓄積されている情報は、本来そういう性格のものなのである。
それらの情報は、より良い仕事をするため、より良い意思決定をするため、より良い成績を上げるために集められた、「役に立つかもしれない」情報である。
当然、その中には「どうも市場はこう動いている“らしい”」とか、「本当かどうか分からないが、“顧客はこう言っている”」といった不確定要素の大きい情報が膨大に存在する。そういったものを見て、考えて、総合的に判断するのが、情報系システムの活用方法なのだ。