中国は元気だ。世界中が100年に1度と言われる経済危機に見舞われている中、巨大な内需に支えられていち早くこれを抜け出した。
8月に北京市中関村や上海市浦東といったいわゆる中国型シリコンバレーと呼ばれる地域を訪問した。北京オリンピックを成功裏に終わらせ自信をつけた北京や上海の人々に、日本のような閉塞感に満ちた顔は見られない。そしてこの根底には、「世界の工場」と呼ばれるに至った産業力の裏打ちがある。
中国の優良メーカーは、先進国のメーカーがかなわないほど短期間に商品を開発する能力に長けている。
鄧小平がタネをまき、「世界の工場」に躍進
高度な産業集積、中核部品の流通、そして先進国のメーカーの製品に対する巧みな模倣力――。誰でも作ることのできる製品を、世界のどのメーカーより早くかつ安く市場投入する。
日本のメーカーが新製品を量産して間もなくすると、市場は似たような中国製品一色となってしまうのである。これこそが中国のメーカーの強さであり、競争力の源泉なのだ。
1978年12月の中国共産党中央委員会に鄧小平は「改革開放」政策を提出、経済再建に当たって科学技術を重視し、外国からの技術導入を積極的に進める方針を打ち出した。
1988年にはハイテク産業の創生策である「火炬(タイマツ)計画」が登場し、中国型シリコンバレーモデルと呼ばれる中関村サイエンスパークをはじめ、現在までに全国各地に54の「国家ハイテク産業開発区」が設立された。そこでは、外国の資本や技術が積極的に導入されて中国全体の工業発展をリードしてきたのである。
実際、中関村や浦東で会った若いベンチャーたちは、自ら技術開発を行ったというより欧米の技術やシステムを中国用にカスタマイズし、米国的なビジネスモデルで業務を拡大しているように見える。
中国がもう一段階飛躍をするためには、このような物真似から脱却し、自らが創造性を生み出す真の意味でのシリコンバレーモデルを実現しなければならない。
模倣文化から脱却できるか
一方、中国政府も独自性やイノベーションの重要性は十分認識しており、胡錦濤国家主席はことある毎にその促進を呼びかけている。
たとえば2006年2月の「国家中長期科学技術発展計画(2006-2020年)」では、2020年にR&D(研究開発)投資の対GDP比率を2.5%とすることや、中国人による発明特許及び科学論文引用数を世界5位以内にする等の具体的目標が掲げられている。