原発が止まる日が、数年のうちにやって来るかもしれない。
日本の電力の3割を賄う原発が止まれば・・・・・・。関東地方では梅雨が明け、早くも酷暑の日々が続くが、その時を考えると一瞬背筋が寒くなる。これは実際にあり得ることだ。
原発から出る使用済み核燃料を再処理して回収されるウランやプルトニウムを再び燃料として利用する日本の「核燃料サイクル」は、いたるところで目詰まりが起こっている。原発が止まるXデーは刻々と近付いている。
遅れに遅れたプルサーマル計画
原発で1度使った核燃料を既存の原発で再び使う「プルサーマル」が今年10月下旬、国内で初めて九州電力の玄海原発3号機(佐賀県玄海町)で始まる。
原発で燃やすウラン燃料全てを輸入に依存する日本にとって、プルサーマルはウラン資源を1~2割節約できる上、核のゴミである高レベル放射性廃棄物を6割減らせるメリットもある。
その一方で、唯一の被爆国、日本で核兵器への転用可能な毒性の強いプルトニウムを取り出すことに対する反発は根強い。取り出したプルトニウムとウランを混ぜて造るMOX燃料の放射線はウラン燃料の250倍と放射線の影響が強いことも懸念材料だ。
1997年に立てられた当初計画ではプルサーマルは今から10年前の1999年に電力長男の東京電力と、次男の関西電力でスタートする予定だった。ところが、実施直前になって関電の高浜原発(福井県高浜町)で燃料データ改竄問題が発覚したことや、茨城県東海村の核燃料加工施設での臨界事故発生で原子力発電への信頼が揺らぎ先送り。東電の福島第一原発(福島県大熊町・双葉町)でも、事故隠しが発覚し計画は頓挫した。
極めつけは北陸電力。志賀原発で1999年6月に発生した「国内初の臨界事故」を8年間も隠していたことが判明した。
「原発トラブルで地元の信頼を損なった」(森詳介電気事業連合会会長=関電社長)影響は、全国に及んだ。電力業界は2010年度までに国内原発の3分の1に当たる16~18基でのプルサーマル実施を目指していたが、現時点で実施のめどが立っているのは6基に過ぎない。電力業界の計画は破綻し、第1の目詰まりが露呈した。電力業界は今年6月に、実施する原発の基数は維持したまま、達成時期の5年延期を発表した。
2012年にも原発停止のXデー
核燃料サイクルの目詰まりは、これだけではない。
2つ目の目詰まりは、青森県六ケ所村にある日本原燃の再処理工場の稼働の遅れ。再処理工場は使用済み核燃料からプルトニウムやウランを回収する核燃料サイクルの要衝だ。建設費2兆円超をかけた同工場は竣工が計画から9年も遅れている。その上、試運転でのトラブルが相次ぎ、操業のめどはいまだ立っていない。
目詰まりの3つ目は、同社のMOX燃料工場だ。国の耐震審査が終わらず、今年4月、完成時期が2012年10月から15年6月に見直されている。
一方で、国はエネルギー安全保障の観点から国内で核燃料サイクルを完結させる方針を掲げ、MOX燃料の海外への製造委託は1998年を最後に終了しており、国内で賄うほかない。