先日、懇意にしている大手製薬メーカーの部長から電話があった。あるソフトウエア会社の経営者と会ってもらえないかという。

 話を聞いてみると、その会社は業績的には優良企業なのだが、国税庁の監査が入り、億単位の追徴課税を課せられてしまった。同時に、銀行が運転資金の融資を一気に引き上げ、経営がおぼつかなくなったというのである。

 その会社は、ある特定業種向けの独自のパッケージソフトウエアを販売している。年間で数十億円の売り上げがあり、儲かるビジネスモデルを持っているという。「もう1社を加えて3社で合併すれば、しばらくは安泰でしょう。場合によっては、上場できるかもしれませんよ」と製薬会社の部長は、話をどんどん大きくしていく。

 いつもの私であれば、「部長、勘弁して下さいよ」と話題を変えているはずだが、なぜか詳しく話を聞いてしまった。

 それは、震災によってIT業界が大きな影響を受けたことが背景にある。システム開発会社はどこも今後の需要の見通しについて戦々恐々としている現実がある。

 当社も、今まで手を出してこなかった「官公庁」の仕事を始めた矢先である。やはり、この先が不安なのだ。官公庁は民間企業と違って「システム完成一括払い」である。運転資金も大変だ。

3社のトップが東京で行ったこと

 そんなことを考えていたら、ある懐かしい光景が思い出された。

 1993年5月、私が会社をつくり、独立しようと考え始めた頃だ。今はもう吸収されてなくなったコンピューターメーカー、コンパックがイベントを主催して、同社のエッカード・ファイファー会長とマイクロソフトのビル・ゲイツ会長、インテルのデビット・ハウス副社長の3人が東京に集まった。

 3人は壇上でそれぞれ「矢」を高く掲げて、3本の矢を束ねれば折れないという毛利元就の逸話を再現したのである。3社のトップが東京で一致団結を誓ったその光景は、これからパソコンの時代が日本で始まるという予兆を感じさせた。

 もちろん、その3社と、国内でビジネスをしている当社を比べることはナンセンスであろう。しかし、日本の限られたシステム開発の市場の中でも合併はある。