昨今、アジア地域などのいわゆる新興市場のボリュームゾーンをいかに攻めるかが日本企業にとっての大きな課題となっている。

 日本企業が新興市場に投入する製品は「ハイエンド」であり、高価格である。拡大する中間所得層をキャッチするためには、ボリュームゾーンとなる「ミドル/ローエンド」へとピラミッドを下りていく発想が必要だ、という論調がよく見られる。ここで言うピラミッドの階段は、製品機能・性能の軸と、製品価格の軸から成る。

 新興市場において、ジャパンブランドは過剰設計・過剰品質だとよく言われる。今回はこの「過剰」問題に焦点を当てながら、アジアの家電市場にどう攻め込むかを考えてみたい。

アジア市場に散らばる「日本のカケラ」

 日本製造業がガラパゴス化しているとよく言われるが、他の地域の製造業はガラパゴスになりたくてもなれないケースがほとんどだ。日本製造業のように、高級品を生み出す技術力とそれらを「大量生産」できる現場の実力を兼ね備えることは、一夜にして成らず、である。

 ガラパゴスだと言われるならば、ガラパゴスであることを効果的に使えばいい。日本製造業を指してガラパゴスと言う際はネガティブな意味合いが込められている。だが筆者は、「ガラパゴスで何が悪い」と開き直る大胆さが必要だと考えている。

 自動車にしろ、家電製品にしろ、海外市場における日本企業製品の評価は「高級品」である。確かに、ニーズが求める以上の過剰設計・過剰品質によって高コスト・高価格化する場合がある。他方で日本企業の製品は人気がないわけではない。中国やベトナム、インドでも、まだまだ日本ブランドに対する人気は高い。

 実際、アジア市場には「日本のカケラ」が散らばっている。例えば、ベトナムの家電売り場に行くと、「OSAKA」ブランドのミキサーや「FUJIYAMA」ブランドのDVDプレーヤーなどを見かける。こうした製品は、日本企業が生産し、販売するものではない。

 日本以外のアジア各国メーカーにとって、日本のイメージを借りること自体に意味がある。製品の信頼性、高級感、安心感、はたまた先進的イメージを得ようとする他国の企業が、日本のカケラを生み出すわけである。

「買わない」のではなく「買えない」

 コピー商品や模造品は困ったものだが、日本のカケラは日本企業製品に対する高い評価の表れである。しかしながら、高級品であるジャパンブランドは高価格だから、顧客はなかなか手を出しにくい。その結果、「買えない」となる。

 しかし、「買えない」と「買わない」は違う。これは大事なことだ。