2日の国内債券市場で、10年物国債(300回債)利回りが1.520%に上昇した(2008年11月11日以来の高水準)。この日入札が行われた301回債の利回りは一時1.540%に上昇した。すでに欧米で目立っていた長期金利の上昇が、東京市場にも限定的ながら波及してきた形である。
では、こうした長期金利の上昇は、景気回復(およびそれに伴う物価上昇圧力の強まり・企業などの資金需要の強まり・中央銀行による金融引き締め観測浮上)に付随してくるのが自然な「良い金利上昇」なのか。それとも、景気回復の確たる見通しが立っていない中であるにもかかわらず財政事情の急速な悪化による国債の大規模増発によって引き起こされた「悪い金利上昇」なのか。
3日の朝日新聞朝刊は、株価と長期金利の今年最高水準が2日に同時に記録されたことを指摘した上で、「日米とも景気回復期待が背景」という日銀幹部のコメントを紹介した。
この日銀幹部は現在見られている日米の長期金利上昇について、「良い金利上昇」だという基本認識を表明したものと受け止められる。同記事はその後に続けて、「ただ最近の市場では、日米とも国債増発で需給バランスが崩れることを不安視する見方が根強い」とも付け加えており、「金利上昇の要因については、景気回復への期待感か国債増発への懸念か、見方は分かれる」とした。
日銀からは白川方明総裁がすでに、最近の欧米での長期金利急上昇について、「良い金利上昇」だという認識を表明している。
金融政策決定会合終了後に行われた5月22日の記者会見で総裁は、「例えばこの数カ月間の欧米の長期国債金利の動きを見ますと、若干上がってきています。これは、景気の大幅な落ち込みがどうやら終わってきて、少しずつ明るい材料が出てきており、その結果先行きの経済の見通しは少しずつ明るくなっているということを反映していると思います。この間、FRB(米連邦準備理事会)やBOE(イングランド銀行)は長期国債の買い入れを実施しましたが、結局、長期国債金利の姿、動きを決めるものは、経済成長率やインフレ率の先行きに関する市場参加者の見方であると思います。短期的な話ではなく、一般的な話として申し上げますと、そうした長期金利が語っているシグナルをシグナルとして受け止めていくという姿勢が大事であると思っています」と述べた。