麻生太郎首相がまたブレた。自ら検討を指示した厚生労働省分割構想について、わずか2週間で麻生は「こだわっていない」と事実上断念。言葉の軽さと指導力の欠如を改めて露呈した。首相官邸の「迷走」は野党に格好の攻撃材料を与え、与党内に動揺を広げた。自民党内からは「ブレが続けば、『麻生降ろし』もあり得る」(若手)との声も上がっているが・・・。(敬称略)

 簡単に事実関係を確認しておこう。麻生が厚労省分割に言及したのは5月15日、首相官邸で開かれた「安心社会実現会議」の会合。麻生は、医療、介護、福祉、年金などを担う「社会保障省」と雇用、少子化対策などを所管する「国民生活省」に分割する案を出した。

 会合では委員の読売新聞グループ本社会長・渡辺恒雄が、厚労省を「雇用・年金省」と「医療・介護省」に分割する案を提示。その上で、麻生は内閣府を含む再編論や、自治、郵政両省などが合併して誕生した総務省の見直し論も展開したという。

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厚労省分割案、背後に与謝野大臣(参考写真)〔AFPBB News

 5月19日の経済財政諮問会議では、麻生が財務・金融・経済財政相の与謝野馨に対し、厚労省分割の具体的な検討を指示。25日には、官房長官・河村建夫と行政改革担当相・甘利明、与謝野の3閣僚が、早急に素案を取りまとめる考えで一致した。

 しかし、自民党厚労族や閣僚らが分割構想に猛反発。すると麻生は5月28日、記者団に分割構想について「最初からこだわっていない」と述べ、事実上撤回した。麻生は「最初からこだわった話をつくられると困る」「渡辺さんが最初に言われたセリフだったと思う。それを基にスタートさせている」などと釈明。翌29日の閣僚懇談会では、「ブレた」との報道に対して「ブレてない」と反発した。

首相発言、存在の耐えられない軽さ

 一体、この2週間の騒動は何だったのか。

 要は、次期衆院選をにらんだ麻生の政治的パフォーマンスが頓挫したわけだ。最初から麻生には「厚労省分割が必要だ」との強い信念がないし、実行力も指導力もない。党内有力者から反発が強まるや、「あきらめが肝心」とばかり持論をさっさと引っ込めたのである。大ケガしないうちに分割案を撤回した判断だけは、麻生にとって正しい選択なのだろうが、国民にぶざまな醜態をさらしたことは否定できない。

 おそらく、「渡辺―与謝野」ラインがつくった厚労省分割構想に、麻生は「うまい話」とばかりにパクっと食いついた。民主党に対抗し、「国民生活重視」の姿勢をアピールできると踏んだのだ。選挙の争点として訴え、自らも指導力を発揮しようと軽く乗ってしまった。まさに「存在の耐えられない軽さ」と言うべきだろう。

 ところが、党内の「抵抗勢力」への根回しは皆無だった。如何せん、自民党内は「寝耳に水」。麻生は分割構想をぶち上げて見せたものの、事前に努力せず、汗を流すこともなかった。党内の反発を抑えるパワーもなければ、信念に基づく説得力もない。

 国民からの支持が3割以下では、官僚や族議員の抵抗を抑えるリーダーシップを発揮できるはずもない。元首相・小泉純一郎と麻生との大きな違いである。