また、既に、実質国有化しているロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)とロイズ・バンキング・グループに関しては、優先株を普通株に転換することで政府の持ち株比率を高め、関与を一層強める対策を実施した。
2月27日のフィナンシャル・タイムズ紙は、これらのスキームを「不健全銀行が完全に国有化されているわけではない――というまやかし(fiction)を成り立たせる目的で考え出されたものだ」と酷評している。
ドイツ政府は、5月に「バッドバンク」構想を発表し、連邦議会の承認待ちの段階。ただ、バッドバンクと言っても、金融機関のバランスシートから不良債権を切り離して損失を確定させるわけではない。政府が損失負担を負わない代わりに、金融機関に長期にわたって損失を繰り延べさせるスキーム。いわば、政府が金融機関に損失の分割払いを許容するという性格のものだ。金融機関にとってのメリットは小さいため、現状では、効果について懐疑的な見方が支配的となっている。
金融機関の不良債権問題を抜本的に解決するには、大別すると「金融機関の部分国有化」と「民間の形を維持したうえでの不良資産国有化」の2つの方法が考えられる。
英国は、前者の部分国有化を指向するものの、大手2行以外に対してどのような方針で臨むかが依然不透明だ。ドイツは、前者にも後者にも満たない案がやっと出てきた段階だ。9月の総選挙を控え、それまでは抜本的な対策が出てこない可能性もある。両国の対応はいずれにしても中途半端な印象を受ける。
「公的資本注入による銀行救済は、銀行の損失を正確に測ることができて初めて意味がある」――ということは、多くの識者の意見の一致するところだ。故に、ブッシュ政権でポールソン財務長官(当時)が実施した資産査定を伴わない資本注入には限界があった。
その反省を踏まえ、オバマ政権は、ストレステストを前面に掲げ、さらに市場メカニズムの活用した官民投資プログラム(=PPIP)を導入することで、技術的に困難を伴う資産査定に対する対応方針を明確にした。
日本の過去の経験でも、「厳格な検査行政」によって、時間をかけて資産査定を行ったことが、産業再生機構を受け皿とした不良資産切り離しスキームの成功につながったと考えられる。
IMFにせかされ生煮え対策
なぜ、欧州は日米の経験を活かすことができないのか――。そこには、欧州地域が持つ2つの特殊要因を指摘することができる。
まず、最大の理由はユーロ圏の構造的問題だ。統一通貨ユーロの強みは確実にあり、危機の当初は欧州中央銀行(ECB)の金利政策と流動性供給がダメージの緩和に大きな役割を果たした。ユーロ圏の小国(ギリシャなど)は、非ユーロ圏の中堅国(デンマークなど)より経済のファンダメンタルズが悪いにもかかわらず、金融危機の影響は相対的に小さかった。
しかし、危機が深化し金融政策の手に負えなくなるところまで進むと、銀行救済や財政政策は「カントリーレベル」、すなわち各国バラバラでしか行い得ないことの限界が見えてきた。
