27日の米国市場では、当局の対応を試すかのような長期金利の上昇が加速した。米10年物国債利回りは一時3.74%まで上昇(昨年11月14日以来の高水準)。昨年12月18日に記録した直近ボトムの2.03%からは、約170ベーシスポイント高い水準になった。また、米30年物国債利回りは一時4.63%まで上昇し、直近ボトムである2.51%からは約210ベーシスポイントも高い水準。2年債と10年債のスプレッドが一時275ベーシスポイントに拡大して、2003年8月中旬に記録した過去最高を上回るなど、イールドカーブのベアスティープ化がさらに進行した。この日は、米債券相場に対していくつもの追い風が吹いたにもかかわらず、ベアスティープ化が止まらなかった点に、市場が現在受けているダメージの大きさがうかがわれる。

 米5年物国債入札は間接入札者比率の上昇などからみて良好な結果に終わったが、今後の入札に対する警戒感が市場を根強く支配したという。また、金利上昇を背景に住宅ローンの借り換えが減少するとみた向きからの米国債売りが、相場を圧迫した模様。

 ニューヨークダウ工業株30種平均が前日比▲173ドルの急反落となるなど株価が急反落。ドルLIBOR3カ月物は2日連続で上昇した。リスク回避・「質への逃避」からの米国債買いが強まってもおかしくはなかったが、この日の債券市場は反応が鈍かった。

 米国債の格付け引き下げ懸念は、この日はとりあえず後退した感が強い。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の欧州・中東・アフリカのソブリン格付け責任者が27日の記者会見で、「英国債格付けに対するネガティブ見通しは、ワシントンに向けられた秘密のメッセージではない」「当社は米国について言いたいことがあれば、米国に関する見解であることを明確にした上で言及する」と述べたほか、「(米国は)世界で最も重要な準備通貨を自由にできる巨大な特権」を有しているため、「ほぼ際限のない借り入れ」が可能で、米国債は「最上級の格付け」を有し、「非常に安全」だと付け加えた(5月27日ブルームバーグ)。また、ムーディーズは米国債の最上級格付けAaaについて、これを据え置くとともに、米国の政治・経済の強みを列挙して、格付け見通しを従来通り「安定的」とした。

 さらに、発表された住宅指標は回復の困難さを示す内容だったが、反応は限定された。米4月の中古住宅販売は、年率468万戸(前月比+2.9%)で、市場予想をわずかに上回った。しかし、前月が下方修正された上に、販売在庫が顕著に増加したことが目を引いた。在庫は396.8万戸(前月比+8.8%)で、月間販売戸数に対する比率は10.2カ月分に上昇した(昨年11月以来の高水準)。発表元であるNARのエコノミストは、住宅価格安定の兆候が出てくるためには、この比率が7~8カ月分まで下がる必要がある、と指摘した。