収入の伸びが鈍い中でも消費マインドを持ち上げる役割を果たしてきた雇用環境の、ここに来ての急激な悪化。春闘の厳しい結果や、各種調査が明らかにした夏季賞与の未曾有の急減。米国を起点にした世界的な景気悪化は、輸出・生産の急減という最初のステージが一巡した後、今度は個人消費を含む国内民間需要の一層の悪化という、次のステージに入ってきている。
筆者は、「300円未満の弁当」増加や、「デパ地下」売上高減少など、個人消費悪化とデフレ圧力の強まりについて、身近な動きにも注目している。日本百貨店協会が毎月発表している全国百貨店売上高から、商品別の売上高推移を見ると、そうした「消費不況」にはステップ感があること、すなわち、雇用・所得環境悪化に追い込まれる形で、特に家庭で財務大臣役を務めることの多い女性層の消費絞り込みが段階的に進んできたことが、以下のように浮き彫りになる(前年同月比は店舗数調整後)。
【ステップ1】 ~ いわゆる「光り物」を買うのをやめる
「美術・宝飾・貴金属」
2007年3月以降、26カ月連続前年割れ(2009年4月は前年同月比▲20.5%)
【ステップ2】 ~ ファッションにかけるお金を減らす
「婦人服・洋品」
2007年7月以降、22カ月連続前年割れ(2009年4月は前年同月比▲13.6%)
【ステップ3】 ~ 「デパ地下」のお惣菜を買う、ちょっとした贅沢も手控える
「惣菜」
2008年6月以降、11カ月連続前年割れ(2009年4月は前年同月比▲8.3%)
【ステップ4】 ~ 「ちょっと茶店で休憩」もやめるようになる、ランチも安い店で
「食堂喫茶」
2008年8月以降、9カ月連続前年割れ(2009年4月は前年同月比▲7.2%)
【ステップ5】 ~ 化粧品代も、ついに絞り込む(その後どうするかは人それぞれだろう)
「化粧品」
2008年12月以降、5カ月連続前年割れ(2009年4月は前年同月比▲4.8%)