福島第一原子力発電所の事故で、「東京を捨てる企業」が少なからず現れた。日本の「ビジネスの本拠」」は東京だったはずだが、それは「幻」にすぎなかったのだろうか。

 ちょっと古くなってしまうが、2003年度の総務省統計局「推計人口」、国税庁「統計年報書」、国土交通省「首都圏整備に関する年次報告」をもとに三重県政策部が作成した資料がある。それによれば、資本金10億円以上の企業のうち、57.9%までもが東京圏(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)に集中しているという。

 「東京一極集中」が一目瞭然で分かるデータである。少なくとも原発事故前までは、この状況に大きな変化はなかったはずだ。

東京を離れても会社の機能は停止しない

 それどころか、東京一極集中は加速している可能性がある。昨年(2010年)6月、りそなホールディングス(HD)は登記上の本社を大阪から東京に移転させた。

 同社に大阪本社はあったが、同時に東京本社を置いて実質的な本社機能は東京に移してもいた。登記上の移転は実態に近づけただけ、とも言える。しかし、無理して実態に近づける必要はなさそうに思える。

 ともかく、りそなHDが本社を登記移転したことによって、大手都市銀行の金融持株会社のすべてが本社を東京に置くことになった。企業が集まったから金融機関の本社が東京に集まったのか、金融機関の本社が集まったから企業が東京に集まるのか、そこは分からない。しかし、東京一極集中が否定できない事実であることだけは、このことからだけでも分かる。

 ところが、福島原発事故をきっかけに本社を東京から移す動きが始まった。家具販売大手の「IKEA」は、本社機能を東京圏の千葉から神戸に移し、約半数の正社員も移した。健康食品販売の「ケンコーコム」も、本社機能の一部を東京から福岡に移している。