北朝鮮との脱北者ビジネスに長く携わってきた国境コーディネーターL氏の話によると、1980年代初期、制度的に開放されて以来、吉林省延辺地区にキリスト教会が増えてきた。1949年に「新中国」が成立以前、文化大革命時代を含め、キリスト教会自体は存在していた。

中朝国境で増え続けるキリスト教会

政府の警戒よそに、多くの人々がクリスマスのミサに集まる - 中国

中国で急速に増え始めたキリスト教会。写真は北京でクリスマスに行われたミサ〔AFPBB News

 しかし、現存する教会のほとんどは改革開放以降後発的に建てられたものである。

 現在、延辺地区において地元の人民政府が合法的に批准している教会は12~15箇所ある。筆者も同地区で最大規模というカトリック教会に赴いてみた。週末に開催される祈りの会に潜入。

 午前の部と午後の部に分かれていたが、筆者は前者に参加した。お祈りの時間は賞味2時間といったところだ。

 壮観としか言いようがなかった。朝鮮語による儀式。若者から高齢者まで、幅広く参加していた。恋人同士だったり、親子が一緒になって来たりしていた。キリストの教えをひたすら音読する。軽く1000人は超えていた。

 何より印象的だったのは、送迎のバスが用意されていたことだ。誰が手配しているのか不思議で仕方ない。周りの参加者に聞いてみても回答は十人十色。

教徒はなぜか政府が用意したバスでやって来る

 党・政府機関が国営のバス会社と提携して、人民の教会活動を間接的にサポートしている、というのが妥当な見方だろう。教会の前には、大型バス10台は容易に停まるであろう駐車場が視界に入ってくる。ただの観光地にしか見えなかった。

 非合法な地下教会は1000以上あるようだ。漢族による活動も存在しなくはないが、延辺地区における地下宗教活動のほとんどが朝鮮族によるものだ。

 週末の祈り活動に参加する住民たちは、一様に「朝鮮族の考え方、民俗習慣はキリスト教信仰に適している、マッチしている」という認識を持っている。特に老人や病人など、社会的弱者と言われる人たちは、キリスト教に活路を見出す場合が多いという。

 中朝国境都市である延辺地区にキリスト教教会がこれほどまでに発達・浸透している理由は、まさに朝鮮族が最も多い地域であるからだ。韓国との往来が日常的に繁栄している。