マスコミ各社の報道によると、政府と日銀がともに、景気の現状に関する判断を上方修正する見通しになった。在庫調整進捗という自律的な動きを主な原動力に、日本経済がテクニカルに景気後退局面を脱却しつつあることを示すエビデンスが、指標面でこのところ増えている。

 鉱工業生産が3月速報で増加に転じたこと。3月の景気動向指数速報で先行CI前月差がプラスに転じ、一致CI前月差のマイナス幅が急縮小したこと。景気ウォッチャー調査で景気の現状判断DIが4カ月連続で上昇し、景気底入れなどのシグナルである5カ月連続上昇にリーチがかかったこと。政府・日銀の景気判断が実際に上方修正されることになれば、景気後退局面はすでに終わったのではないかという見方が、一層強まることになるだろう。

 後述するように、前回景気後退局面終了時には、景気の谷である2002年1月から2カ月後の同年3月に、政府・日銀いずれも、景気判断を上方修正したという経緯があるからである。

 政府は、5月下旬に公表する最新の月例経済報告で、2月から4月まで「景気は、急速な悪化が続いており、厳しい状況にある」としてきた景気の基調判断を上方修正する見通しになった(5月14日 朝日新聞、共同など)。

 上方修正は、「景気は、緩やかに回復している」という前月の表現を「景気は、回復している」に変更した2006年2月以来、3年3カ月ぶりとなる。報道によると、景気悪化のペースが緩やかになっていることを示す表現に差し替える方向で調整中。雇用情勢が一段と厳しくなっていることもあり、「悪化」という言葉自体は残るものとみられる。