13日の欧米債券市場では、長期金利が大幅低下する動きが目立った。ユーロ圏、英国、米国いずれにおいても債券買い材料が出てきたことが印象的である。

 根底にあるものは、米国の家計が1992年以降15年間ほど膨らませてきた「過剰消費」の削ぎ落としプロセスがなお道半ばであり、景気・物価のリスクは明らかにダウンサイドにあり、このところ株式市場を中心に広がっている楽観論には無理があるという、「厳しい現実」である。

 ユーロ圏の債券市場では、このところ上昇していた独連邦債の利回りが急低下となった。10年物は3週間ぶりの大幅低下で、3.34%前後に。2年物は0.1%ほど水準を切り下げて、1.28%前後に下がった。

 ユーロ圏固有の材料として出てきたのは、経済指標では、3月のユーロ圏鉱工業生産が前月比▲2.0%、前年同月比では▲20.2%という過去最大のマイナス幅を記録したこと。政策面では、スロベニア中銀クラニェツ総裁のハト派発言である。

 クラニェツ総裁はブルームバーグのインタビューで、5月理事会で導入を決定したカバードボンド購入額600億ユーロを超えて欧州中央銀行(ECB)が資産買い入れを行っていく「可能性は非常に高い」「これは最終の金額ではない」と明言。さらに、「高格付けの債券や、コマーシャルペーパー(CP)のような短期証券を買い入れる可能性を排除しない」とも述べて、社債やCPにまでECBが買い入れ対象を拡大する可能性にも言及した。

 この発言は、タカ派の筆頭格であるウェーバー独連銀総裁の同日の発言内容とは、きわめて対照的。だが、5月ECB理事会の決定内容やトリシェ総裁会見の内容からみて、ウェーバー総裁らタカ派の影響力退潮は鮮明である(5月8日『ECBも「信用緩和」導入』参照)。市場はクラニェツ総裁のハト派発言を素直に材料視。債券は買われ、外為市場ではこのところ買われていたユーロが売り戻される一因になった。ユーロ/ドルは1.36ドル割れ。ユーロ/円は130円割れとなった。

 英国では、四半期インフレ報告が発表され、キング総裁が記者会見を行った。景気の回復力が弱いことを強調した上で、インフレ率は向こう2年間の予測期間の大半で目標値+2%を下回るだろうという、慎重な内容。景気については、生産の回復でいったんリバウンドした景気が来年に再度悪化に向かうという「W字型」の可能性が小さくないことを示唆するものになった、と報じられている(5月14日フィナンシャル・タイムズ アジア版)。