米労働省が8日に発表した米4月の雇用統計で、非農業部門雇用者数のマイナス幅は縮小、失業率は急上昇を続けるという、市場予想に沿った数字になった。しかしその意味合いについては、よく考える必要がある。

 4月の失業率は、前月比0.4ポイントの上昇で、8.9%になった。これは1983年9月以来の高水準。昨年12月以降、0.4~0.5ポイントの急上昇が毎月続いている。米当局が大手19金融機関を対象に行ったストレステストは、先行きの経済状況変化について一定の前提を置いた上で、損失発生見込みと資本増強必要額を示したものである。

 そこで、標準シナリオ(baseline scenario)として想定された失業率(年平均)は、2009年が8.4%、2010年が8.8%。今回発表された4月の8.9%という数字は、これらよりも高い。また、より景気が悪化するシナリオ(more adverse scenario)では、失業率(年平均)の想定は、2009年が8.9%、2010年が10.3%である。遅行指標としての失業率の性質を考えると、9%は単なる通過点であろうし、おそらく年内に10%に迫ることになるだろう。米国景気の悪化は、ストレステストの景気悲観シナリオさえも超えていくほどの動きになっていることが、容易に理解される。

 雇用統計発表当日の米国株は、正式発表されたストレステストの結果を好感し、買われる展開になった。だが、安易な楽観は引き続き禁物と、筆者は考えている。ストレステストの結果については、公表直前の当局と検査対象金融機関との交渉を経て、資本増強必要額が大幅に圧縮されたという内幕を伝えた報道も出ている(5月9日 ウォールストリート・ジャーナル)。ストレステストで出てきた数字は、「経済情勢の悪化度合い」に加えて、「見解の相違」によって数字が大きく変わってくる、言うなれば「可変的」なものであり、決して絶対視すべき安心材料ではない。

 4月の非農業部門雇用者数の前月比増減は、▲53万9000人。市場予想を下回るマイナス幅になった。しかしこれには、来年の国勢調査のための一時雇用が連邦政府で急増したことが寄与しており、政府部門を除いた民間のみの雇用者数は▲61万1000人である。また、非農業部門雇用者数の過去2カ月分には、合計▲6万6000人分の下方修正がかかった。雇用者数の減少は16カ月連続で、景気後退局面の継続を示唆している。さらに、月々の振れを均すため後方6カ月移動平均を見ると、4月は▲65万6000人で、マイナス幅は一層拡大した。