まったく不思議なことに、自治会にいい印象を持っている人はほとんどいない。

 住宅街の自治会、マンションの自治会。本来は、そこに住まう人たちの生活を守る場なのだから、もっと自分のこととして積極的に受け止めてもいいはずなのだが。

 自治会への印象には、現代社会に生きる人々の価値観がそのまま反映されている。つまり、彼らは干渉されたくないのである。自治会というのは管理の必要上、いやがうえにも私生活に関わりを持ってくる。

 ただ、実際には情報の連絡が主な仕事であり、そのほかにお祭りなどの住民交流事業や共有場所・共有物の管理があるにすぎない。普通に生活を送っている分には、さほど私生活に干渉してくるものではないのだ。

 おそらく他人とあまり関わりを持ちたくないという気持ちが、自治会的なものへの拒否感を生じさせているのであろう。

変わりつつある自治会の位置づけ

 それでも、これまではそれで済んでいたからよかった。面倒なことは多くの年配者たちが代わりにやってくれていた。あるいは、住宅街やマンション自体が新しく、それほど手をかける必要もなかったからだ。

 ところが、事態は大きく変わりつつある。これまで世話を焼いてくれていた年配者たちは高齢化し、新しい世代は皆無関心層になっている。住宅街やマンションもすっかり老朽化してしまっているのだ。あちこちで手入れをする必要が生じているのである。もはや自治会の機能不全は、住宅街やマンションそのものの機能不全を意味している。

 2009年1月13日付の日本経済新聞の記事によると、今、自治会の存在意義は、単なる情報連絡機能や住民交流機能を超えて、新たに居住環境と資産価値の保全にシフトしつつあるようだ。

 記事によれば、マンションの維持管理、住宅街の防犯カメラ設置といった居住環境の整備が、人々を自治会へと引きつけているという。また、それは必然的にマンションや住宅街の資産価値を高めているというのだ。

 自治会というと、どうしても住民相互の交流が頭に浮かぶ。だが、それは多分、自然に発生する「おまけ」なのだ。現に、居住環境や資産価値の保全を主目的とした自治会活動であっても、それが活性化していくと、住民交流が行われるようになるという。