「17倍の断層」と中国側のジレンマ

 一方で、受け入れ側の中国は複雑な、あるいは消極的とも取れる反応を見せている。

 先月、中国政府は国内テック企業に対し、H200の購入を大学の研究などの「特別な状況」に限定するよう、意図的に曖昧な表現で指示を出したと報じられた(米ネットメディアのジ・インフォメーション)。

 英ロイター通信によれば、中国の税関当局はさらに一歩踏み込み、国内の代理店に対し、現時点でH200の輸入を許可しないと通達した。

 背景には、米国製チップへの依存が再び強まることで、ようやく育ち始めた自国の半導体産業が淘汰されることへの強い警戒感がある。

 米シンクタンクの外交問題評議会(CFR)の分析では、エヌビディア製品と中国・華為技術(ファーウェイ)製チップの性能差は、2027年には現在の約5倍から17倍にまで拡大すると予測されている。

 中国の半導体受託生産大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)は現在、回路線幅7ナノメートルの壁に直面している。米国主導の製造装置輸出規制によって、その先の微細化が行き詰まっているためだ。

 中国政府は、H200の導入企業に対し一定比率の国産チップ購入を義務付ける「抱き合わせ(バンドリング)」案を模索するなど、技術的自立と当面の演算能力確保の間で揺れ動いている。

市場の混乱と「供給」という物理的限界

 ビジネスの現場では、実務上の課題も浮き彫りになった。

 中国企業からのH200の引き合いは200万個規模に達しているが、エヌビディア側の在庫は70万個程度にとどまり、需要と供給のミスマッチが深刻化している。

 台湾積体電路製造(TSMC)の魏哲家・董事長兼CEO(最高経営責任者)は1月15日、旺盛な需要を受けアリゾナでの第4工場建設を申請中であると明かしたが、米政府は生産の40%を米国内に移すという野心的な目標を掲げている。

 また、エヌビディアは先月、中国顧客に対して「全額前払い」を求めているという報道を否定し、「受け取っていない製品の支払いを求めることはない」と釈明に追われた(ロイター通信)。

 これは、中国当局による輸出入承認の不透明さを背景に、エヌビディア側が慎重な取引条件を提示していたことを示唆しており、民間レベルでも地政学リスクへの警戒が解けていないことを物語っている。