「2025年大阪・関西万博 大屋根リング」 2025年 提供:2025年日本国際博覧会協会
(ライター、構成作家:川岸 徹)
2025年大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーを務めるなど、今最も注目を集める建築家・藤本壮介。自身初となる大規模個展「藤本壮介の建築:原初・未来・森」が、東京・森美術館で開幕した。
人と人との関係性を築く建築物を
2020年12月、建築家・藤本壮介の設計により群馬県前橋市に開業した「白井屋ホテル」。全25室の客室にはそれぞれ異なる作家のアート作品を設置。ホテルというより、プライベートギャラリーに泊まるような気分がなんとも楽しい。
《白井屋ホテル》 2020年 群馬 撮影:田中克昌
白井屋ホテル開業直後は、コロナの影響により宿泊客が少なく、現在よりはるかに予約が取りやすい状況が続いていた。筆者は運よく、金沢21世紀美術館の恒久展示《スイミング・プール》などで知られる現代アーティスト、「レアンドロ・エルリッヒの部屋」に宿泊することができた。
レアンドロルームは、部屋全体を走る金色のパイプが印象的。だが、それ以上に細部へのこだわりに驚かされた。浴室のシャワーノズルやトイレットペーパーホルダーまで、レアンドロの自作。世界のレアンドロが、ここまで徹底的にやるのか。後日、ホテルの広報から「ソウ・フジモト(藤本壮介)が作るホテルなら、俺も一緒に何かやりたい」と、レアンドロ自らがホテル建築プロジェクトへの参加を志願したという話を聞いた。
ホテル開業後、藤本壮介さんにインタビューする機会があり、こんな話を聞かせていただいた。
「素晴らしい建築物とはどんなものか? 私は人と人との関係性を築くものだと定義しています。多様な人が集まり、接点をもち、コミュニティを作り上げる。白井屋ホテルが、前橋市民と世界各地をつなぎ、人と人とを結ぶ場所になれたら、これほど素敵なことはありません。ホテルにはプライバシーを重視した“閉じられた空間”と、できる限り“開かれた空間”という、相反する2つの要素が必要になる。そのバランス感の実現に苦労しているんですよ」
撮影:デビッド・ヴィンティナー
