参院選候補者のポスター前を通り過ぎる人(7月17日、写真:つのだよしお/アフロ)
初めに、とても心配な情報から共有させてください。
7月16日、敬愛する大学学部の先輩でもある、郷原信郎弁護士が緊急入院されたとの発表がありました。
7月6日の日曜日頃から体調が優れず、9日水曜日に大学病院に行くと「悪性リンパ腫の疑い」ということで週末11日まで検査入院。
組織を取って検査に出し、確定診断とリンパ腫の型の特定を待っていたところ、15日火曜日に病状が悪化、緊急入院され、集中治療室(ICU)で治療を受けておられるとのことです。
参院選挙では、虚偽のうえにデマを重ねるような「選挙演説」を山のように見ますが、そのようななか、郷原さんは右でも左でもなく不偏不党、憲政と法治の本義に照らして真っ直ぐな主張を一貫して発信しています。
昨年度までは東京大学コンプライアンス相談窓口の法律事務所として、東大学内に無数存在するコンプライアンス問題、様々なハラスメント被害の軽減にも尽力されました。
正気の施策を実現される灯明のような存在と思います。ぜひ、適切な加療により快癒されることを心からお祈りします。
さて、ここで考えてみてください。
悪性リンパ腫という病名が出ていますが、いま立法府の頭がおかしくなり「そんな病気は存在しない」と言い出したら、どうなるでしょう?
あるいは、行政で頭のネジが飛んでしまい「悪性リンパ腫なんて病気は存在しないから、保険適用など諸般のケアも廃止する」などと言い出したとしたら?
明らかに困ります。ところが、米国トランプ政権は延々と「地球温暖化問題は存在しない」と繰り返しているわけで、ほぼこれと同様で、人類に災厄をもたらす規模の「反知的主張」と言わねばなりません。
もし仮に地球温暖化が存在しないとすれば、いま現在も高知・徳島両県には線状降水帯による集中豪雨に見舞われ、水害はもとより、土砂崩れなどの二次災害が懸念されています。
こうした、かつて20世紀にはほとんど見られなかった天候不順、データが客観的に示す地球気候変動を、どのように説明できるでしょう?
動機があって事実に反することを平気で喧伝しているとしか考えられません。こういう人物が政権を取ると、旧ソ連や中国の文化大革命、北朝鮮の飢饉のように、ろくでもないことになりかねません。
しかし大変残念ながら、今回の参院選でも、不幸にして完全に誤った主張を複数目にします。
中でも最も重篤な症状だと思われるのが、ある政党が打ち出している「そもそも、発達障害など存在しません」「 通常の子供たちと全く同じ教育を行なえば問題ありません」という主張です。
教育者の一人として看過できる問題ではありません。
この主張をしているのは急に勢いをつけた新興政党のようですが、こんな考えの人たちが万が一政権に加わるようになってしまったら、医療や教育を含め国の行政機構が壊れてしまうことを正味で懸念します。
以下、右派も左派もない学術セクターの観点から、こうした「反知的主張」で瞬間沸騰型の民心を買おうとするデマゴギーのリスクを指摘したいと思います。