この旅一番の目的だった中尊寺金色堂だが…(写真はすべて筆者撮影)
(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)
いつか平泉に行ってみたいと思っていた。
目的はもちろん、奥州藤原氏三代(清衡、基衡、秀衡)が築きあげた東北の仏国土(楽園)である中尊寺の金色堂(国宝)と、浄土庭園が残る毛越寺(もうつうじ)である。
6月下旬、例年なら奈良に行くのだが、今年の夏は平泉にしようと決めた。
となれば、東北はおよそ30年ぶりだ。
当時はオートバイで仙台の友人宅まで行ったのだが、おそらく東北は、今年が最後の旅になるだろう。
とするならこの際、盛岡にも、花巻や遠野にも、松島にも行ってみたいと考えた。しかし3泊では足りない。しかも交通費など、意外に出費がかさむこともわかった。
それで仙台、平泉、松島に限定することにした。
もともと旅行で、ぎちぎちの予定を組むのは好きではない。
坂とカーブに振り回された仙台のバス
6月22日(日)昼前に仙台着。早速、市内循環バス「るーぷる」で市内一周に出かける。
最初は伊達政宗の墓所である瑞鳳殿である。
いきなり想定外の坂道と長い階段の洗礼を受ける。年寄りには堪える。瑞鳳殿は政宗の性格を反映してか、華美である。
バスでは立ちっぱなしで、青葉城跡に至る道では高低差のあるカーブごとに振り回される。中心部を外れた仙台が、こんなに坂やカーブが多い街だとは知らなかった。「坂好き」のタモリは「ブラタモリ」で仙台をやっていないか、とどうでもいいことを考える。
大崎八幡宮(国宝)がこれまた100段ほどの急勾配の石段で、足腰に自信のないわたしは上り下りに神経を使った。
急階段をのぼりようやくたどり着いた大崎八幡宮
仙台はこの日から3日間は雨の予報だったが、この日は降らなかった。